記憶のインデックス付け
今から20年以上、コンサルタントだったときに、電子マネーの仕事をしたことがありました。その仕事を担当する以前は、街を歩いていても電子マネーに関する看板などがまったく目に入りませんでしたが、担当して、どうやって電子マネーを普及させようかと考え始めたら、意外と色々なところで電子マネーが使えることに気づくようになりました。つまり、自分の仕事になって関心を持ったことで、目に入った看板がインデックス付けされるようになったのです。
よく、自分の進路や目標を言葉にして掲げることが重要だと言われますが、それを痛感するような体験でした。言葉にすると、無意識のうちにも役立つ情報が記憶に残りやすくなるため、叶えやすくなるわけです。
記憶力アップに睡眠は不可欠
近年、睡眠中には「メモリー・コンソリデーション」という記憶を統合する作業が行われていることがわかりました。私たちが日中に経験したことは、海馬と言われる短期記憶に保存されます。その中で、今後必要だと判断された知識だけを引き出して、長期記憶に整理統合して脳に蓄える作業が、メモリー・コンソリデーションです。
この作業中に、私たちは夢を見ると考えられています。残念ながら、起きたときにはほとんど忘れていますが、夢の正体は、脳による記憶の仕分け作業だったわけです。単に肉体的な疲れを取るだけなら、睡眠時間は6時間ぐらいで十分ですが、メモリー・コンソリデーションのためには、もう少し長く、7、8時間寝たほうがいいとも言われます。
飲酒は長期記憶化を妨げる
ただし、飲酒して寝ると睡眠の質が落ちるため、うまく仕分けされずに、きれいさっぱり忘れてしまう可能性があります。それも飲酒の害の一つで、日中にどんなに有益な情報を得たとしても、長期記憶として残りにくくなってしまいます。逆に、運動や入浴が記憶にいいとされるのは、脳の血流をよくするからです。脳の血流がよくなると、十分な酸素が脳に供給されて記憶力が高まると言われます。
年を取ってくると記憶力が悪くなった気がするのは、睡眠時間が短くなったり、体を動かす機会が減ることが影響すると思われます。また、長時間通勤に長時間労働、人がたくさんいる狭い空間での勤務環境というのも、記憶力にとっていい状況ではありません。そうしたストレスがかかった状況だと、脳は物事の理解や記憶をスムーズに行えず、それを呼び起こすときにも苦労が伴ってしまうからです。