交番にとって負担の多い「巡回連絡」

しかし、なんでもかんでも引き受けていたら、警察は本来やるべき犯罪捜査に回す人手が足りなくなってしまう。新型コロナウイルスを鎮静させても、窃盗や強盗や詐欺が増えたら、何にもならない。

なんといっても、日本の警察官は世界の警察官よりも忙しい。たとえば彼らは「巡回連絡」をやっている。

巡回連絡とは、交番勤務のおまわりさんが自宅にやってきて、「変わりはないですか? ご家族は何人ですか」などと調べて回る仕事だ。昔は住民も当たり前のように扉を開けて、お茶の一杯も出して話していたけれど、近頃は日中、訪ねても留守の家が多くなった。また、たとえ家にいても、独身女子や高齢者の一人住まいは扉を開けないことが多い。犯罪の抑止、災害防止、住民との良好な関係を保つためには重要な仕事だけれど、交番のおまわりさんにとっては負担の多い仕事でもある。

ただ、巡回連絡がきちんと行われていれば、特殊詐欺の電話の掛け子たちや夜中に豚舎や梨畑で窃盗を繰り返す人間たちがアパートの一室で暮らすような状態の抑止にはなる。市民にとってはありがたいサービス業務なのだけれど、不意打ちのように自宅に来られるのはうれしくはないのが一般の感情だろう。

2020年2月13日、京都の路上にパトカー
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でも生活のもめごとは警察に解決してほしい

市民は警察が衛生警察や思想警察になるのは嫌だけれど、生活まわりの支援サービスについてはもっとやってもらいたいと思っている。

たとえば、隣の家がゴミ屋敷だったとする。市役所にいくら連絡してもなかなか返事は来ない。市役所の係員がゴミ屋敷の住人に忠告したとしても、なかなか従わない。しかし、警官が訪ねていくと、それだけで状況は変化することがある。

市民は生活のもめごとに関しては迷惑系ユーチューバーと同じような意識になっている。とにかく面倒くさいことは警察にワンストップでやってもらいたいのである。