捜査手法が進化した街頭の防犯カメラ

ここにあるような基礎的な治安対策がじわじわと効いてきたから犯罪が減少したのだろうが、ある長官経験者に聞いてみると、「ポイントはふたつ」と言った。

「入国管理を厳しくしたことで外国人の犯罪者が減ったこと、もうひとつは街頭に設置された防犯カメラだ」

特に防犯カメラについてはカメラもそれを使った捜査手法もともに進化したこともあり、効果を上げている。

しかし、防犯カメラを使った捜査とはただ、画面を見ていればそれで済むわけではない。カメラがなかった頃よりもかえって、人手を取られるようになった。警察にとってITの発達はいい面とそうではない面がある。時間と人手がかかる典型だったのが渋谷で起こったクレイジーハロウィーン事件である。

約250台のカメラ、約4万人から犯人をあぶりだした

2018年のハロウィーンから2カ月後の年末のことだった。警視庁は渋谷交差点近くの雑踏で軽トラックを横転させた4人を逮捕した。事件にかかわったのは外国籍を含む17~37歳の男、計15人である。いわゆる「クレイジーハロウィーン事件」の犯人たちだ。

ニュースを動画で見た人も多いと思うが、あの日の渋谷には仮装した人、見物に来た人など約4万人であふれかえっていた。お面やマスクをかぶっていた人間もかなりの人数だった。

2016年10月29日、ハロウィーンでにぎわう渋谷スクランブル交差点で警戒に当たる警官たち
写真=iStock.com/recep-bg
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それなのに捜査官たちは防犯カメラを見て、その後を追跡、犯人を特定したのである。目が充血するのもいとわぬ捜査で容疑者を追い詰めたのだが、近年はこうした捜査が増えているのである。

捜査が始まったのは事件の翌日からだ。警視庁は所轄の渋谷署だけでなく、他の署からも捜査員を集め、渋谷を中心に合計約250台の防犯カメラの映像を回収した。捜査員たちは容疑者の画像を追い、容疑者が使ったとみられる最寄りの駅でICカード乗車券の履歴を調べた。また、容疑者が降りたと思われる駅すべてに聞き込みをし、追跡したのである。

こうした捜査手法が主流になっていくと犯罪は減っているにもかかわらず、仕事は膨らんでいく。画面を見るだけではなく、裏付けのために駅などへの聞き込みをしなくてはならないからだ。捜査員は目も使うし、体も酷使する。