2021年4~6月は成長率の差が鮮明に
今見たように、台湾は経済を失速させることがなく、米国、中国はいったん落ち込んだものの比較的力強く回復した一方、日本、欧州、シンガポールは回復が遅れていましたが、今年4~6月期の成長では大きな差がついています。
各国とも、かなりの成長率を確保したものの、日本だけが成長率が1.9%(改定値)と大きく回復が出遅れています。米国は6%台、中国(前年比)、台湾は7%台の成長です。
日本同様、1~3月期までは低迷していたユーロ圏も、プラス8.2%の成長です。表にはありませんが、ドイツ、フランス、イタリアは、それぞれ、6.7%、3.8%、11.1%と高い成長をしています。シンガポールも14.7%の成長です。
日本の低迷は、かなりの部分、ワクチン接種が遅れたことが原因です。そして、接種が十分に進まない中で、デルタ株が蔓延し、日本では第5波が襲い、これまでなかった感染者数を経験しているのが現状です。そして、緊急事態宣言が続いています。
肌感覚の景況感を表す「街角景気」は7月までは何とか回復基調だったのですが、8月は大きく落ち込みました。
周回遅れの日本経済が欧米並みに回復できればいいのですが、米国経済にもピークアウト説が出るなど、予断を許さない状況です。また、デルタ株に代わる変異株も出てくる可能性があり、日本経済が回復しないままの可能性もないわけではありません。こうした中、菅内閣が退陣ということになったわけです。
日銀が何もできないことが今後はさらに目立つようになる
新政権には、ぜひとも景気対策に期待したいところです。その中では、欧米と同様に、ワクチンを2度接種済みの人たちに対しては、県をまたいだ移動や飲酒をともなう外食を自由にすることなどが盛り込まれることを、経営コンサルタントとして企業を見ている側の人間としては、切に希望したいところです。
もちろん、感染対策は今まで通りに、個人や企業レベルで万全を期さないといけないことは言うまでもありません。
こうした中、期待薄なのが日銀です。効果を期待できるこれ以上の金融緩和はほとんど不可能ななかで、米国は金融緩和の削減、いわゆる「テーパリング」を年内にも始める予定です。
米国の8月の非農業部門の雇用者増加数がいまひとつだったこともあり、9月からのテーパリング開始は難しいかもしれませんが、11月か12月には始まるのではないでしょうか。
日銀は緩和からの脱却はかなり難しい上に効果的な新しい政策もほとんどとれないので、中央銀行の動きの差がさらに鮮明になることが懸念され、この面での景気への援護射撃は期待薄です。新政権がどのような景気対策を打ち出すのかに注目です。