K字回復の日本経済、強くものはより強く、弱いものはより弱く

まず、K字回復から見ていきましょう。

それが一番表れているのが、7月に発表になった日銀短観(6月調査)でしょう。図表1を見てください。

日銀短観業況判断

これは企業経営者などに3カ月に一度景況感を尋ねているものです。「良い」と答えたパーセントから悪いと答えた人のパーセントを引くものですが、その中間的な答えも認めていて、その数字は除外されます。ですから、2019年9月調査の大企業非製造業の「21」はかなり良い数字ということができます。同月の調査は、10月1日に控えた消費税増税の直前でしたが、製造業は当時でも「5」と、米中摩擦などの影響もあって、ふるわない状況でした。

その後の12月調査は消費税増税後ということになりますが、製造業が「0」まで沈んでいるのに対し、非製造業は「20」を維持し、消費税増税の影響がほとんどなかったことがわかります。飲食業などを中心に人手不足が顕著だったのもこの頃です。

ところが、新型コロナウイルスの蔓延で一変します。

コロナの影響が日本でも色濃く出始めた2020年3月調査では、製造業が「-8」、非製造業が「8」ですが、前回調査からの“落差(下落したポイント)”を見ると、製造業が8ポイントであるのに対し、非製造業は12ポイントも落ちています。

その後、コロナの影響が製造業、非製造業ともに大きく出ますが、2021年に入ると、製造業は3月調査で「5」、6月調査では「14」まで回復しています。景況感的には、コロナ前の状況に戻っています。

一方、非製造業は、6月調査でようやく水面下から浮かび上がりましたが、それでもやっと「1」という状況です。コロナ前の景況感がとてもよかっただけに、その落差は非常に大きく、厳しい状況が続いているのです。

とくに旅行業の回復が大幅に遅れています。

本連載でも何度か旅行業の現状を伝えてきましたが、いまだに厳しい状況が続いています。海外旅行やインバウンドが見込めない中、コロナ前に比べて1割程度の売り上げのところも少なくありません。HISは本社ビルを売却しましたし、航空会社もさらなる固定費の削減を進めようとしています。

度重なる緊急事態制限にしびれを切らせた飲食店の中には、自治体の要請を無視して、深夜まで開店したり、酒類の提供を行ったりしているところも見かけます。とくに中小では、このままでは事業が成り立たないところも少なくないのです。