新型コロナウイルスのワクチン接種を証明する「ワクチンパスポート」の運用が各国で進んでいる。日本でも7月26日から発行受付が始まったが、対象は海外渡航予定者に限られている。国際カジノ研究所所長の木曽崇さんは「ワクチンパスポートの国内利用こそが、経済正常化を実現する唯一の手段だ」という――。
交付された新型コロナウイルスワクチンの接種歴を証明する「ワクチンパスポート」=2021年7月26日、東京都品川区
写真=時事通信フォト
交付された新型コロナウイルスワクチンの接種歴を証明する「ワクチンパスポート」=2021年7月26日、東京都品川区

いまだ大きく出遅れるワクチン接種率

新型コロナウイルスの感染爆発で、経済は危機的状況にある。帝国データバンクは8月3日、新型コロナウイルスの影響で破産などの手続きをとって倒産した企業や、事業を停止して法的整理の準備に入った企業は、コロナ禍が発生した去年2月からの累計で1860社になり、今年になって急増しているとするレポートを発表した。

業種別では「飲食店」が311社と最も多く、次いで「建設・工事業」が185社、「ホテル・旅館」が101社、「食品卸」が97社となっており、飲食業や観光業などコロナ禍で直接的な被害を受けているレジャー業種はもとより、そこから受注する業種である食品卸や建設・工事業などの間接業種までもが連鎖的に倒産するケースが増えている。

新型コロナウイルスの急激な感染再拡大に伴い、8月2日から、東京都と沖縄県以外の4府県においても緊急事態宣言が発出された。本来は「書き入れ時」となる夏の行楽シーズンを失ったレジャー産業の倒産も、今後ますます拡大することは確実だ。

さらにレジャー産業にとって悩ましいのは、現在直面している新型コロナウイルス感染の再拡大と、それに伴う各種営業制限に終わりが見えていないことだ。現在、政府と各自治体は新型コロナウイルスに対するワクチン接種を躍起になって進めているが、全国民のうち2回のワクチン接種を完了した者は4155万人(8月5日時点)、比率に直して32.7%にとどまっている。ここ数カ月のブーストでだいぶ追い付いてはきたものの、この比率はカナダ(59.47%)、イギリス(56.66%)、イタリア(52.76%)、ドイツ(51.87%)、アメリカ(49.31%)などと比べると(いずれも8月4日時点)、いまだ大きく出遅れている。