ワクチン接種が完了してもwithコロナは続く

何よりも問題となっているのが、わが国よりも先行してワクチン接種が広がった各国において、「ワクチン接種だけでは感染拡大を止めることができない」ことが証明され始めていることだ。コロナ禍初期の分析では、全人口比率で60~70%のワクチン接種があれば社会的集団免疫が機能すると想定されており、各国はそれを目標として自国民に対するワクチン接種を進めてきた。

しかし、ここ数カ月の間に感染力の強い新型コロナの変異株が誕生したことで、その想定は完全に崩壊している。イギリスやアメリカなどワクチン接種で先行している国々でも、いったん縮小局面にあった新型コロナウイルスの新規感染者数が再拡大に転じ始めている。

日本においても、7月29日に行われた衆院内閣委員会の閉会中審査にて、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が「仮に国民の70%に(ワクチン接種を)したとしても、残りの30%の人がプロテクトされることでは残念ながらないと思う」との見解を示した。

さらに言うのならば、現在接種が進められているワクチンの効果は1年間程度であり、それを持続させるには継続的なワクチン接種が必要であるとの認識が、ワクチン接種で先行する国々でも既に共有されつつある。希望者に対するワクチン接種がほぼ完了したと言われるイスラエル、イギリス、ドイツ、フランスなどでは、国民に対する3回目のワクチン接種準備が既に始まっている。

すなわち、ワクチン接種が国民の間で一通り完了したとしても、そこで人類と新型コロナウイルスの戦いが終わるわけではなく、皆が毎年一回ワクチンを打ち続けながらコロナと共に生きてゆく「withコロナ」の時代が少なくとも当面は続くということだ。

ワクチン接種先行国で広がるワクチンパスポート

「皆が当初思い描いていたような『afterコロナ』の時代は来ない」。このような現実の中で、われわれが改めて考え直さなければならない重要な事案が「ワクチンパスポート」の活用である。

ワクチンパスポートとは、新型コロナウイルスのワクチン接種を証明する公的文書のこと。ドイツ、イタリア、オーストリアなどを中心に、既に30カ国以上で導入または検討されているほか、いまだ国単位での導入がなされていないアメリカやイギリスなどにおいても各地域単位でその利活用が進んでいる。

その運用のあり方に関しては、飲酒を伴う店やスポーツイベントの利用にあたって提示を義務付けるものから、出入国に伴う隔離期間の免除などの優遇措置を設けるものまでさまざまである。いずれもワクチン接種者に対して特別に各種行動制限を解除するという点では共通だ。

アメリカでは既に「民間によるワクチンパスポートの利用は国民の権利制限にはあたらない」とする裁判所の判断も出始めており、企業、病院、学校がその従業員や学生に対してワクチン接種証明の提出を義務付ける動きも急速に広がっている。