欧米ではコロナ禍に終わりが見え、「マスクなし」の生活に戻りつつある。なぜ日本は後れているのか。評論家の山形浩生さんは「日本人のコロナ自粛は、欧米先進国に比べれば、よっぽどすごかった。各国の被害は日本以上だが、コロナ禍に見切りをつけて、いまのような“戒厳令もどき”を意図的に終わらせようとしている。日本もそうした判断を下すべきだろう」という――。(後編/全2回)
8月11日、大リーグのエンジェルス対ブルージェイズの試合で、3回裏の大谷翔平のホームランに歓喜するスタンドを埋めたファンたち。マスクをしている人はごく少数派。
写真=USA TODAY Sports/ロイター/アフロ
欧米ではマスク無しでのスポーツ観戦も日常化しつつある。2021年8月11日、米大リーグのエンジェルス対ブルージェイズ戦

これ以上ぼくたちは何ができるというのか

前編から続く

そもそも、これ以上の何ができるのだろうか? ぼくは主観的にも、客観的にも、これ以上の大きな犠牲を強いるのは不可能だと思っている。人びとはすでに、十分すぎるくらいに犠牲を払って予防策を講じているからだ。

まずほとんどの人は、主観的にはこれ以上のことはできないと思っている。少なくとも、するつもりはない。

いや、そんなはずはない、という人もいるだろう。感染者数が増えると、毎回ツイッターなんかに、とても意識の高い人びとが出てくる。その人びとによると、これまでのコロナ対策が効かなかったのは、一部の不心得者のせいだ。

曰く、マスクしないヤツが悪い、出歩くヤツが悪い、酒飲んで騒ぐ連中が悪い、無知な若者が悪い、外食する連中が悪い、旅行する連中が悪い、立ち話する連中が悪い、買い物にでかける連中が悪い、フェイスシールドを使う連中が無知だ、空間除菌剤にすがろうとする店舗はバカだ、お弁当をいっしょに食べる連中が悪い、ワクチン打たないバカが悪い。そういう連中さえ行動を改めれば、コロナは一気に解決するはず、なのだそうだ。

でも、それを嬉しそうに指摘する人びとすべてに共通するポイントがある。みんな、自分は大丈夫だと思っているということだ。自分はやるべきことをきちんとやっていると思っている。悪いのはいつも他人だ。自分はしっかりやっている。悪者はあいつらだ。あの他人を取り締まれば世の中はよくなる……

でも、状況はちっとも改善されない。