朝方にイヌリンを摂取すると「腸内細菌叢が良くない状態」が改善される

また、イヌリンは菊芋やゴボウなどに豊富に含まれているので、食材から摂ることも可能ですが、イヌリン自体は工業的に作ることもできます。一方、非常に多くの機能性表示食品に、成分として記載されている難消化性デキストリンは、食品や植物にわずかしか含まれていません。

ヒトの研究の前に行ったマウスの「1日2食実験」について紹介します。食生活が良くないモデルマウス(朝夕高脂肪食を与えたマウス)がイヌリンを摂取することによって改善効果がもたらされることを期待する実験として、与える高脂肪食にイヌリンを1〜5%含むようにした餌を、朝もしくは夕に与えるという形で行ったものです。

実験開始後約2週間の腸の内容物を取り、食物繊維の代謝産物である短鎖脂肪酸量などを測定しました。その結果、朝にイヌリンを摂食したマウスは、夕方にイヌリンを摂食したマウスと比較して、短鎖脂肪酸が多く産生されました。これらは酸であるので水素イオン濃度(pH:酸とアルカリの指標)を測定すると酸性側に傾いており、悪玉菌の繁殖を阻害するなど、腸の健康に寄与します。また腸内細菌種の多様性や、構成の違いなども、朝方にイヌリンを摂取したマウスはより良い方向に変化しました。高脂肪食などで腸内細菌叢が良くない状態を、ディスバイオシスと呼んでいますが、朝方にイヌリンを摂取するとディスバイオシスが改善されるというわけです。

サプリメントより食品が良いことも

ところで、菊芋にはイヌリン以外にも難消化性食物繊維やポリフェノールなどが含まれています。そこで、今度は菊芋を、菊芋からの水溶性成分の抽出物、有機溶媒の抽出物、水にも有機溶媒にも溶解しない成分の3成分に分けて、それぞれ単独で、あるいは組み合わせての実験を行いました。

その結果、水溶性成分単独より、この3成分を組み合わせた方が、腸内細菌に対する効果が強力であり、特に有機溶媒成分との組み合わせが効果的で、重要であることがわかりました。すなわち、イヌリンをサプリメントとして飲むより、菊芋として摂取する方が腸内細菌には良いことがわかったのです。

さらに、このような現象を粉末ゴボウでも同様に確かめました。マウスの餌で、イヌリンが1〜5%含まれるものと、粉末ゴボウが1〜5%含まれるものとを比較しました。仮説としては、イヌリンの方がゴボウより効果的であると予想されました。なぜなら、粉末ゴボウに含まれるイヌリンの割合は50%程度しかないからです。全体に対するイヌリンの割合が大きい方が効果が当然大きいと考えたのです。

ところが、先の菊芋の実験と同様に、粉末ゴボウ含有の方がイヌリン単独成分含有のものより効果が勝っていました。図表1には、善玉菌であるビフィズス菌の割合が、イヌリンより粉末ゴボウの方が大きく増大していることを示しています。粉末ゴボウは、水溶性食物繊維と難消化性食物繊維が良い割合で含まれ、かつ他の成分も含まれています。おそらく難消化性食物繊維が腸の蠕動運動をさかんにし、そこに腸内細菌のとなるイヌリンなどが与えられることによって腸内細菌は増殖するということでしょう。