※本稿は、柴田重信『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』(ブルーバックス)の一部を再編集したものです。
腸内細菌は1日のなかで大きく変動する
体内時計は、腸内細菌叢の構成成分などに影響するということが、わかってきています。マウスの実験で、時計遺伝子が働かないマウスや、シフトワークのモデルとなるようにしたマウスについて調べた結果、腸内細菌叢の構成成分の多様性が低下することがわかりました。シフトワークモデルのマウスには肥満の状態も見られました。
興味深いことに、シフトワークモデルのマウスの糞便を、正常な状態で飼育しているマウスに移植すると、移植されたマウスはシフトワークモデルのマウスのように肥満になってしまうのです。このことから、肥満の原因の一部には腸内細菌叢の不健全化があることが考えられます。
また、マウスの朝、昼、夕、夜の糞便を解剖により採取し、腸内細菌叢を調べてみました。その結果、朝と夕とでは違いが見られました。すなわち、腸内細菌叢は1日のなかで一定ではなく、ダイナミックに変化していることが判明しました。そのことは、活動期(ヒトの昼間に相当)に多くのものを摂取したり、運動したりすることによるものではないかと想像しやすいのではないでしょうか。
また、ヒトの腸内細菌叢は非常に個人差があります。食生活が個人個人で大きく異なるので、当然といえば当然といえます。
難消化性デキストリンは腸内細菌叢を変化させる
腸内細菌に影響を及ぼす食材は多く知られています。その一つである水溶性食物繊維はプレバイオティクスとして知られ、機能性表示食品にも数多く使われています。プレバイオティクスとは、①消化管上部で分解・吸収されない、②大腸に共生する有益な細菌の選択的な栄養源となり、それらの増殖を促進する、③腸内細菌叢の構成を健康的なバランスに改善し維持する、④ヒトの健康の増進維持に役立つ、という4つの条件を満たす食品成分のことです。
ブドウ糖由来の難消化性デキストリンや、果糖をベースにしたフルクタンやイヌリンなどがよく知られています。
難消化性デキストリンは糖や脂肪の吸収を抑える働きがあることから、メタボリックシンドローム改善に良いことが知られていますが、その抗肥満効果は、難消化性デキストリンが腸内細菌叢を変化させることも大きな要因と考えられます。