新型コロナウイルスの爆発的な感染増加が続く中、水面下で別の“大きな健康リスク”が現実のものになりつつあると警鐘を鳴らすのが、『糖尿病の真実』などの著作で知られる水野雅登医師だ。最前線で患者の治療に当たる水野氏が直面した「恐るべき現実」とは──。(第2回/全3回)

急激な体重増加、血管や臓器はボロボロ…

昨年から始まった、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う「不要不急の外出」の自粛要請によって、コロナ以前と比べ、短期間に体重が大きく増える人が増加しています。

加えて、血糖値、血圧、中性脂肪やコレステロールなどの検査数値が悪化する人が増える傾向にあるのですが、この事態がまだあまり知られていないことに、医師として強い危機感を覚えます。

先日、健康診断でみた方は、この「体重増加に伴う検査数値の悪化」の典型といえるケースでした。

パンデミック前の数年間はきちんと体重をキープできていて、糖尿病に関連する検査結果の「HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)」も5.8%で「糖尿病2歩手前」でした。ところが、今回のパンデミックが始まった2020年から2021年にかけて体重が増加し、HbA1cは6%台に上昇。ついに「境界型」に達してしまいました。

正常値から「境界型」になるまでには時間がかかりますが、「境界型」から糖尿病発症にまで至るのははるかに早く、適切な対応が必要です。

HbA1cは6.5%からが「糖尿病」域になりますが、この患者さんに限らず、急に「糖尿病」域を超えたり、それに近い数値になったりするケースが、新型コロナ以降の検診で確実に増えてきていることを実感しています。

しかも、糖尿病の数値だけでなく、血圧、LDLコレステロール値、中性脂肪などにも数値の悪化が起こっています。

体重が増えることで腹まわりについた内臓脂肪が分泌し、体の代謝を乱す物質「アディポサイトカイン」による作用、異所性いしょせい脂肪による臓器の炎症、インスリンによる体内のダメージ等で、血管や臓器がボロボロになっていき、数値がどんどん危険水域に近づいていくためです。

簡易血糖値測定をする女性
写真=iStock.com/Noppawan Laisuan
※写真はイメージです

基礎疾患を持つ人のリスクが増大

コロナにおいて、体重増加に伴う各種の生活習慣病罹患リスクが高まる現在の状況は、私たちがそれ以前とは異なる「2つの大きなリスク」を抱えたことを意味しています。

1つは、新型コロナウイルス感染後の重症率・死亡率の増加です。

代表的なのは糖尿病です。糖尿病は、肥満と同じく、新型コロナウイルスに感染したときの「重症化リスク」が高まることが早い段階から明らかになっています。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が2020年3月に発表した調査によると、同年2月12日から3月28日までに新型コロナウイルスに感染した患者7162人を調査・分析したところ、一般病棟に入院した患者のうち、糖尿病患者の割合は24%、ICU(集中治療室)で呼吸管理が必要になった患者が同32%であることがわかりました。

つまり、糖尿病患者が新型コロナに感染すると重症化しやすい傾向がある、ということです。アメリカだけでなく、中国やイタリアからも、同様の報告がされています。

ほかにも、肥満、高血圧、心血管疾患、慢性腎臓病、慢性閉塞へいそく性肺疾患などの基礎疾患が、重症率・死亡率を高めるリスクとなることが明らかになっています。