病気になっても病院を頼れない現実

コロナ以前とは異なるもう1つの大きなリスクは、基礎疾患を抱えているにもかかわらず、病院を受診できなくなるリスクです。

感染がさらに拡大したり、医療崩壊が起きたりすれば、基礎疾患に必要な治療がこれまでどおり受けられなくなる可能性が出てきます。

医療機関は、すでにコロナ禍以前のように気軽に行ける場所ではなくなっています。新型コロナウイルスに感染するリスクを恐れ、受診しない人が非常に増えてきました。コロナ以前は多くの人が「何かあったら病院に行けばいい」という意識でいましたが、「今はやめておこう」に一変したことがわかります。

また、新型コロナウイルスの対応に手を取られ、その分、それ以外の医療が縮小されているケースもあるでしょう。

私が知っているだけでも、パンデミックをきっかけに通院をやめた患者さんは10人、20人ではありません。百人単位です。痛みなどの症状があり、それが気になっていても「このご時世だから……」と受診を控えている方が大勢います。

この現象が今、全国に広がっているのです。

「気軽に受診しづらい」という状況下で、前述のように各種の検診数値の異常が出てきたり、悪化したりしている人が増えています。

医療の逼迫ひっぱくが続く中で、糖尿病や高血圧などの患者が爆発的に増えれば、医療の状況はいっそう厳しくなることが予想されます。新型コロナの感染リスクにさらされながら通院・治療することは、患者・医療機関の双方に大きな負担であるのは間違いありません。

数値の“危険フラグ”を放置しない

もし、すでに健康診断の検査結果が危険水域にある場合には、医療機関がまだ機能している今の段階で、なるべく早く病院を受診することをおすすめします。

検査の結果、すでに診断基準を満たしているのに、本人が忘れていた、もしくは気づいていなかった、というケースは枚挙にいとまがありません。中には何年もの間、放置している人も珍しくありません。

とくに糖尿病は、発症していてもほとんどの場合、自覚症状がないためにそのまま放置されることがよくあります。

しかし、「なんともないから大丈夫」が通用しないのが、糖尿病です。糖尿病予備軍から糖尿病患者、糖尿病重症者へと、自覚症状がないままにシフトしていきます。

数値が悪い場合には、眼底ですでに糖尿病性網膜症の変化が起きているかもしれません。糖尿病性網膜症は、失明するまで視力がまったく変わらないこともあります。眼底出血によって、突然目が見えなくなるという可能性もあります。

同じように、糖尿病性腎症も初期には自覚症状がありません。気づかぬうちにどんどん進行して、あるとき健康診断で「すぐに透析を始めないと命の保証はできません」と告知を受けることになります。

私自身、患者さんにそう言わざるをえない状況を何度も経験してきました。