官房長官は首相の女房役といわれるが、安倍の在任中に起きた数々の安倍の疑惑の真相を、菅は逐一知っていたはずである。
日本のCIAというのは大げさだが、内閣情報調査室から議員や官僚たちのスキャンダルもいち早く入手していたに違いない。
長きにわたって官房長官を務めた菅首相を怒らせれば、スキャンダルを暴露されると怯えるのは、安倍前首相も例外ではないと思う。
現役の幹事長である二階と菅がタッグを組んでいたのだから、「菅再選異議なし」の空気が自民党内に広がったのは当然だったのである。
党員票の行方によっては“番狂わせ”も
菅、岸田、それに石破が出るかもしれない。
二階を斬るといい出した菅が、細田派に強い影響力を持つ安倍や麻生派などの大派閥に推されて議員票では有利だが、議員票と同数の383票ある党員票が誰に流れるかで、番狂わせがあるのではないかと見ている。
どちらにしても二階がどう動くのかによって、大きく変わってくることは間違いないようだ。
だが、忘れてはいけない。このメディアを巻き込んだお祭り騒ぎで、自民党という堕落した政党が生まれ変わることなど決してないということを。
もし岸田が首相になり菅と二階を追い払ったとしても、首が挿げ替わっただけで中身はまったく同じ自民党である。
これまでも自民党はそうやって生きながらえてきた。騙されてはいけない。
元東京帝国大学総長で政治学者の南原繁はこういった。
「国家は主導的に正義を実現してこそ存在価値がある。国家が権力を持ち、権威があるとされるのは正義を実現しようとするからだ。そして国家は正義であればこそ、国民に政治的な義務を課すことができる。正義を追求しない国家に権威を振りかざす資格はない」(村木嵐著『夏の坂道』潮出版刊)
自らは不正義を追求するばかりなのに権威を振りかざし、国民に義務ばかりを課す首相が何代も続いてきた。
次の衆院選が、その流れを変えるラストチャンスかもしれないと思っている。(文中敬称略)