創価学会の会員は機関紙「聖教新聞」を購読している。さらに自身だけではなく、周囲に購読を勧めて、無償で配達をすることもある。なぜそこまで熱心なのか。宗教学者の島田裕巳さんは「2代会長戸田城聖、3代会長池田大作、どちらも非常に話術が巧みで、大勢の会員を引きつけ、贔屓に仕立て上げたからだろう」という――。

※本稿は、島田裕巳『「ひいき」の構造』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

無数の一万円札
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新宗教が巨大な建築物を建てる目的

新宗教の入信動機としては、「貧病争」ということが言われる。貧しさ、病気、そして家庭内の争いごと、とくに嫁姑の争いごとから解放されることを求めて信者になるというわけである。

それも重要なことだが、一方で教団自体が大きな目標を掲げていることも欠かせない。そうした目標があることで、組織の活動は盛り上がりを見せていく。新宗教ではどこでも、巨大建築物を建てるということが、大きな目標になった。

たとえば、創価学会の場合、1990年代のはじめまでは日蓮宗の一派である日蓮正宗と深く結びついていた。創価学会が俗信徒の集団であるのに対して、日蓮正宗は出家した僧侶の集団である。その時代、創価学会に入会することはそのまま日蓮正宗に入信することを意味した。

日蓮正宗の総本山となるのが静岡県富士宮市にある大石寺である。創価学会は、日蓮正宗と密接に結びついていた時代には、大石寺の信徒団体となっていて、多くの建物を寄進した。なかでも、大石寺に伝わる板曼陀羅まんだらと称された本尊を祀るための正本堂の建設は最大規模の事業だった。

4日間で1500億円相当の「供養」が集まった

正本堂を建てるために寄附が募られたが、それは、「供養」と呼ばれた。供養の期間は1965年10月に4日間設けられた。目標は55億円だったのだが、それをはるかに上回る355億円が集まった。それから60年近くが経っており、消費者物価は4.2倍になっている(2020年)。そうであれば、当時の355億円は、現在では1500億円近くになる。相当な巨額である。

大石寺にはほかにも信徒団体があるので、創価学会だけで1500億円近くを集めたわけではないものの、創価学会の信者数は抜群に多く、ほとんどは創価学会の会員たちによるものだった。

その後、創価学会と日蓮正宗とは対立し、日蓮正宗は創価学会を破門にしてしまう。それによって、1972年に完成した正本堂は1998年に解体されてしまった。解体費用はおよそ45億円かかったとされるが、阪神・淡路大震災を契機に耐震性が問題になったこと、年間の維持費が10億円もかかること、そして、破門した創価学会の力が大きかったことが解体の理由となった。