戸田は、実業の方面には才能があったが、文筆家ではない。したがって、『小説人間革命』は、本人が書いたものではないと考えられるが、今のところ代筆した人間は判明していない。しかし、代筆であるにしても、自分の本にデタラメが書いてあると言い放つ人間は普通ならいない。

それでも、戸田のこのあけすけな発言に、聴衆となった創価学会の会員たちは拍手喝采している。この率直さに、戸田が膨大な数の会員を引きつけ、贔屓に仕立て上げた要因があった。

3代会長池田大作の講演は学会員の大いなる楽しみだった

それは、戸田の後を継いで3代会長になった池田大作にも受け継がれた。ただ、池田は酒が飲めないようで、酒を飲みながら講演することなどない。

講演する創価学会の池田大作名誉会長(1986年8月31日、東京・八王子市の創価大学)
写真=時事通信フォト
講演する創価学会の池田大作名誉会長(1986年8月31日、東京・八王子市の創価大学)

池田がどのような活動をしたかは、『新・人間革命』(聖教新聞社)に詳しいが、基本的には会員のもとへ出向き、直接会員たちとことばを交わすことが中心になっている。もっとも訪れた回数が多いのが大阪で、池田はこれまで大阪を258回訪れている。

池田が地方を訪れた際、再会した人間のことは名前や職業などについてしっかり覚えていて、それで会員を驚かせ、感激させるという。池田は人心掌握術にたけている。

衛星中継を通してであるが、私は、創価学会の本部幹部会での池田の講演を聴いたことがあった。それは実に巧みで、会場につめかけた会員たちとのやり取りもユーモアにとんだものだった。2008年以降、池田は会員たちの前にもほとんど姿を見せなくなるが、それまでは、本部幹部会における池田の講演は会員たちにとって大いなる楽しみだった。そのことは、衛星中継の画面に池田が登場するだけで、それを見ている会場の空気が一変するところに示されていた。