「君たちを圧倒してやる」とスポーツ大国ぶりを誇示

組織的なドーピング違反で主要国際大会から除外されているロシアは、東京五輪に「ROC」(ロシア・オリンピック委員会)の名称で、違反歴や疑惑のない約330人の選手団を送り込み、金20、銀28、銅23のメダルを獲得した。メダル総数では、米中に次ぐ3位だった。

2020年東京オリンピックの閉会式で行進するロシアオリンピック委員会の選手たち=2021年8月8日、東京・オリンピックスタジアム
写真=SPUTNIK/時事通信フォト
2020年東京オリンピックの閉会式で行進するロシアオリンピック委員会の選手たち=2021年8月8日、東京・オリンピックスタジアム

ロシア外務省のザハロワ報道官は開会前、英ロックバンド「クイーン」の大ヒット曲「We Will Rock You」(君たちを圧倒してやる)にちなんで、「We Will ROC You」とInstagramに投稿していたが、注目競技で多くのメダルを獲得し、スポーツ大国ぶりを誇示した。

ロシアといえば、旧ソ連時代から五輪のたびに世界を驚かせる行動が目立ってきたが、今回もミシュスチン首相が7月26日、開催国・日本を挑発するかのように、北方領土の択捉島を訪問した。開催中には最大の同盟国、ベラルーシの陸上女子、クリスツィナ・ツィマノウスカヤ選手のポーランド亡命事件もあった。ロシアには、五輪のたびに世界を驚かせる数奇な因縁がつきまとう。

五輪に政治問題を持ち込むのは旧ソ連の伝統

旧ソ連は戦後、五輪に政治問題を持ち込み、スポーツの祭典を動揺させてきた。

1964年、前回の東京五輪期間中、最高指導者フルシチョフが失脚し、政変が起きた。中国はその直後、敵対したフルシチョフの解任を祝福するかのように、五輪さ中に初の核実験を実施した。

1968年のメキシコ五輪直前、ソ連はチェコスロバキアに戦車を投入して自由化運動を弾圧し、五輪で世界の総スカンを食った。

ソ連が初めて開催した1980年モスクワ五輪は、前年末からのソ連軍アフガニスタン侵攻で日米中西ドイツなど主要国がボイコットし、冴えない大会となった。

東側諸国は報復として、1984年のロサンゼルス五輪をボイコットしたが、ソ連から不参加を強要された東欧諸国には不満が強く、東欧革命の導火線になった。

ソ連邦崩壊直後の1992年バルセロナ五輪では、新興独立国の五輪委員会が未整備なことから、バルト三国を除き連邦に属していた12カ国が「EUN」(フランス語で「統一チーム」)の名称で参加。「冷戦の敗者」ながら、世界トップの45個の金メダルを獲得した。これに対し、「冷戦の勝者」といわれた日本の金メダルは3個で、振るわなかった。