「地元開催」で国家ぐるみのドーピングが発覚
プーチン時代のロシアも、五輪お騒がせ体質は変わらない。
2008年8月の北京五輪開会式の日、ロシア軍はジョージア(旧グルジア)の挑発に反発して同国に侵攻。激しい戦闘が1週間続き、平和の祭典を蹂躙された開催国・中国は両国に二度も停戦を要求した。
2014年にロシアが五輪史上最高の約5兆円を投入して開催したソチ冬季五輪では、閉会式と並行してウクライナ情勢が緊迫し、反政府デモ隊が親露派大統領を追放。プーチン大統領は対抗措置としてウクライナ領クリミアを併合し、東部でも親露派勢力に独立を宣言させた。
そのソチ五輪でロシアは13個とトップの金メダルを獲得して国威が高まり、過度の愛国主義がウクライナ介入につながった形だ。
しかし、ソチ五輪で国家ぐるみのドーピングをしていたことがドイツのメディアによって暴かれ、世界ドーピング機関(WADA)がロシアの資格停止を決定。多数の選手が永久追放され、数個の金メダルを剥奪された。
国際オリンピック委員会(IOC)は制裁として国歌と国旗の使用を禁止。東京五輪では、国歌の代わりに、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」が使用された。ロシアは第二次世界大戦中に愛国歌として広まった「カチューシャ」を提案したが、IOCは政治利用として拒否した。
東京五輪では処分はやや緩和されたものの、ドーピング震源の陸上競技は10人、重量挙げは2人に選手を制限された。処分は2022年12月16日まで適用され、ロシアは来年2月の北京冬季五輪や6月のカタールでのサッカー・ワールドカップ(W杯)も国として参加できない。
国威発揚の「ステート・アマ」は今でも存在する
旧ソ連は国策として、有望選手を小さい頃から英才訓練で育成し、五輪での国威発揚に利用してきた。プーチン大統領も「柔道で五輪選手を夢見たこともある」と話したことがあり、スポーツをロシア大国化に国策利用する。
有望選手が国から報酬や身分保障がなされる「ステート・アマ」の扱いを受ける伝統は変わらない。今回、ロシアは男女の体操団体で金を獲得したが、女子体操団体優勝の立役者、アンジェリーナ・メルニコワは「私たちは1年半、閉鎖された訓練キャンプに閉じ込められ、家族に会うこともなく練習を重ねた。普通の生活は送れなかった」と告白していた。
テニスの混合ダブルスで優勝したアンドレイ・ルブレフは「東京五輪の数週間前から、テニス・チームはサハリンで合宿した」と明かした。ロシア各地に専用施設があるが、ウラジオストクにも15競技のトレーニングを行う「五輪村」がある。選手団は極東の施設で練習し、時差調整をしたようだ。ロシアは累計約650万人の新型コロナ感染者を出しているが、極東の感染者は比較的少ない。