207日ぶりに副会長がサムスンに復帰する
韓国法務省は、韓国最大の企業であるサムスン電子の副会長である李在鎔(イ・ジェヨン)氏を8月13日に仮釈放すると発表した。李氏は贈賄罪などで2021年1月に懲役2年6カ月の実刑判決を受け収監されていたが、およそ7カ月ぶりの社会復帰となる。
その背景の一つとして、韓国の経済界は李氏の赦免を文政権に求めた。赦免ではなく、行動が制限される仮釈放となったが、李氏が経営に近い環境に身を置くことは、韓国経済にプラスだ。
李氏はサムスングループの最高意思決定権者だ。近年、李氏の意思決定に基づいてサムスン電子はファウンドリ分野の設備投資を実行してきた。それは、コロナ禍における韓国経済の回復を支える大きな要素となっている。
足許、サムスン電子は設備投資を積み増すなどして事業体制を強化しなければならない局面を迎えている。中長期的に世界経済全体でIT関連投資が増加すると考えた場合、仮釈放の実現はサムスン電子の意思決定を加速させ、同社の収益は増加する可能性がある。
わが国の対韓貿易収支は黒字だ。サムスン電子をはじめ韓国企業はわが国企業にとって顧客に位置付けられる。基本的に李氏の仮釈放はわが国企業の収益獲得にプラスに働くだろう。
サムスン電子の株価が上がれば景況感も上向く
2021年4~6月期のサムスン電子の売上高は63兆6700億ウォン(約6兆1000億円)だ。その規模は、韓国の実質GDPの13.4%に相当する。一国の経済における主要企業の存在感という点で、サムスン電子のプレゼンスは世界的に大きい。それが意味することは、韓国経済の成長にサムスン電子の業績拡大と先端分野への経営資源の再配分が欠かせないことだ。
端的に、サムスン電子の収益が増えれば韓国経済は成長する。同社の設備投資や研究開発の積み増しは、韓国経済の成長にプラスに働く。その逆もまた真なりだ。
サムスン電子の業績と韓国の景気の関係は、同社の株価と韓国の製造業PMIの推移を確認するとよく分かる。基本的に、サムスン電子の業績期待が高まり株価が上昇すると、韓国の製造業PMIは上向き、景気の強弱の境目である50を上回ることが多い。反対に、サムスン電子の業績期待が低下して株価が軟調に推移すると、PMIはかなりのペースで50を下回る水準に落ち込むことが多い。
それが意味することは、サムスン電子がデジタル家電、ディスプレー、スマートフォン、メモリ半導体、ファウンドリ事業で世界の需要を取り込み、それが韓国の輸出や消費の増加を支えたことだ。