AI、工学、計算機数学…米国以上となった中国との競争

2点目として、サムスン電子は中国企業との競争にも対応しなければならない。中国は人工知能(AI)や素材、工学、計算機数学などの論文の質と引用件数で米国を上回り始めた。対中輸出によって成長を実現してきた韓国企業にとって、中国企業は重要顧客から競争上の脅威と化している。中国企業を上回る競争力を発揮するために、サムスン電子は設備投資を積み増さなければならない。その際も李氏の意思決定が必要だ。

財閥創業家出身のトップである李氏は、サムスングループの顔だ。同氏の意思決定が利害関係者の信頼獲得に欠かせない。韓国経済がさらなる成長を目指すために、李氏の仮釈放の意義は大きい。

日本製の工作機械や制御機器を求めている

今後、ファウンドリ事業を中心にサムスン電子は一段と速いスピードで事業体制を強化するだろう。現状、サムスン電子の業績は回復し、韓国経済はプラス成長だ。当面の展開を考えた時、李氏の仮釈放は韓国経済にプラスに働くだろう。それによって、韓国経済のサムスン電子への依存度は一段と高まる。

過去の経緯をもとに考えると、李氏の仮釈放は、わが国経済にとって基本的にプラスに働く可能性がある。足許、デルタ株など新型コロナウイルスの感染再拡大によって、世界経済の供給制約が深刻化している。サムスン電子がスマートフォンの生産拠点を中国から移したベトナムでは、生産活動が鈍化している。

ロボットアーム
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その状況下で事業運営の効率性を高めるために、サムスン電子は、わが国の工作機械や制御機器をより多く必要とするだろう。感染が収束した後も、サムスン電子が生産性を高めるためにファクトリーオートメーションへの投資は積み増さなければならないはずだ。