LG社製のバッテリーが「発火の恐れ」

7月23日、米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)は、電気自動車(EV)モデルの“シボレー・ボルトEV”のバッテリーから発火する恐れがあるとしてリコール(回収・無償修理)を米国運輸省の道路交通安全局(NHTSA)に届け出た。過去1年間でシボレー・ボルトEVのリコールは2回目だ。

米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の工場で車体を組み立てる作業員ら
写真=AFP/時事通信フォト
米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の工場で車体を組み立てる作業員ら=2019年6月12日、アメリカ・ミシガン州フリント

今回のリコール問題の影響は大きい。まず、GMの電動化にとって痛手だ。シボレー・ボルトEVはGMが他のモデルの電動化を進めるための基礎的な役割を担ってきた。次に、問題のバッテリーを製造したLG化学およびそのグループ会社などの韓国バッテリー業界にとって、今回の発火問題は素材面を含めバッテリー製造に関する基礎的な技術に不安があることを利害関係者に示す機会になった。

見方を変えると韓国企業は、価格競争力と、安心と安全を支える基礎的な製造技術の両立が難しい。LG化学が発火問題の迅速かつ抜本的な解決が難しい場合には、傘下企業の株式新規公開や研究開発体制強化のための資金調達は難航する恐れがある。それは、車載バッテリー市場における中国企業のシェア拡大を勢いづかせる要因になるだろう。

EVへのシフトを図るGMにとって大きな痛手

今回のリコール問題がGMのEV戦略に与える影響は大きい。なぜなら、GMにとってEVシフトをはじめとする自動車の電動化は、すり合わせ技術の弱さから脱却して成長を目指す重要なチャンスだからだ。

2008年9月15日に発生した“リーマンショック”によって、自動車に加えて金融事業に注力したGMの経営は行き詰まった。2009年6月にGMは自力での再建をあきらめて“連邦破産法11条(通称、チャプター・イレブン)”を申請した。それによってGMは国有化され、2013年12月に国有化は終了した。

第2次世界大戦後の米国経済にとって、GMは自動車産業を象徴する企業であり、重要な雇用基盤の役割を果たしてきた。それゆえ、リーマンショック後の経済環境において米国政府は国有化によるGMの経営再建を重視し、雇用の回復につなげようとした。

2014年1月に技術畑出身のメアリー・バーラ氏がCEOに就任したことによって、GMは転換点を迎えた。就任直後バーラCEOが対応したのがリコール問題への対応だった。2001年頃からGMは完成車の技術的な欠陥を把握していたにもかかわらず、対応をとらなかった。