「気が遠くなるほど退屈な儀式」「たまらなく不快だった」
コロナ危機が収束の兆しを見せない中、始まった東京五輪。アメリカで7月23日の開会式をテレビで視聴した人は過去33年で最低を記録し、イギリスでもロンドン五輪の開会式に比べ視聴者数は9割超も減った。異常な状況下で日本に開催を強要した国際オリンピック委員会(IOC)の傲慢さは、限界に達した「スポーツの祭典」の矛盾をさらけだした。
英大衆紙デイリー・メールのコラムで、著名ジャーナリストのピアーズ・モーガン氏は「たまらなく不快だった」と本音をぶちまけている。
「正直言って、際限のないダウンビートが続く悲惨な開会式の間、深い眠りに陥った。気が遠くなるほど退屈な儀式は何の歓喜ももたらさず、混乱に満ちており、不公平で荒廃した五輪を中止しなければならない理由を白日のもとにさらした。6万8000人の空席に向け、白々しく手を振るアスリートの行列をながめるのはたまらなく不快だった」
モーガン氏はさらにこう指摘している。
「世論調査で五輪開催を望まない日本人が7割にものぼり、政治指導者はコロナ危機から国民の命を守るより商業的な利益を優先させたと国民は信じている」
一方で、普段は日本に対して辛辣な英メディアの多くは、開会式について同情的に伝えた。
「開会式の役割がその瞬間の精神を反映することにあるのなら、それは成功だったと言えるだろう。それなりに開会式はかなり美しかった。喪失……、私たちが暮らす(コロナ危機という)時代を反映していた」(英紙デイリー・テレグラフ)
「開会式は優雅さ、シンプルさ、正確さを表現することに成功した。それらは世界が日本の中に見いだし、そして日本人が誇りに思っている資質だからだ。東京には2008年北京五輪の攻撃的なナショナリズムや12年ロンドン五輪の生意気な賢さはなかった」(英紙タイムズ)
「パンデミックの苦難から目をそらさず、喪失と悲しみをテーマにした瞑想的なセレモニーだった。ジル・バイデン米大統領夫人やエマニュエル・マクロン仏大統領ら約1000人の観客を除く空っぽの観客席は強力な象徴になっていた」(英紙ガーディアン)
欧州連合(EU)離脱で地理的に最も近い友人を失い、先の大戦以来続くアメリカとの「特別な関係」を再構築する一方で、中国への対抗勢力として日本との連携を強化したいイギリスの外交的な思惑がにじむものの、英メディアの評価は予想以上に高かった。