「書き出し、自分を知る」妬みの感情に振り回されない方法

自分が誰かに妬みの感情を持ったときは、「相手のどんな部分に妬みを感じるのか」を、突き詰めて考えてみてください。

脳科学者の中野信子さん
撮影=川しまゆうこ
脳科学者の中野信子さん

自分よりも頭がいい、年収が高い、容姿が美しい……。たいていの場合、妬みの要因となるものが複数あるはずです。気分はあまりよくないかもしれませんが、ひとつずつあきらかにしていきましょう。

ポイントは、それらを紙に書き出すこと。頭だけで考えていても、気持ちが乱れるばかりで、妬みの感情はなかなか解消に向かいません。

紙に書き出すことができたら、次はその妬みのリストを見て、「自分はどうすれば満たされるか」を考えてみてください。自分が本当にほしいもの、自分がありたい状態を思い描くのです。

それは相手と同じ土俵に立ち、相手を超えることかもしれません。あるいは、相手が持っていない能力を磨くことかもしれません。自分のやるべきことが明確になれば、妬みの感情があなたのエネルギーへと昇華されていきます。

妬みの感情に振り回されず、むしろ徹底的に向き合うことで、妬みをいいかたちで転換していく道筋を描くことができるはずです。

他人と比較してはいけない

自分とほかの誰かとを比べてしまうとき――自分がその誰かについて知っていることと、相手が自分自身について知っていることの量には、かなりの差があります。誰しも自分のことと同じように、他人について細かい事情がわかるはずがありません。

自分自身については、これまでどれだけがんばってきたのか、どんな逆境があり、それをどう乗り越えてきたのかをよく知っています。そんな主観によって自分と他人とを比べてしまうから、心が騒いでしまうのです。

でも、その相手だってそれは同様です。

あなたには見えない苦労や努力を、どこかで必ずしているのです。毎日24時間、あなたは相手のことを見ているわけではありません。まったく同じ種類の経験ではないでしょうが、ただ「なにもせずうまくいっている」わけではないはずです。

このように、誰かと比べて落ち込むときは、相手についての情報量が決定的に不足していることを忘れてはなりません。

人はうまく自分の価値を測ることができないため、つい身近にいる他人や、遠くにいる有名人などと自分を比べてしまいます。しかし、自分以上に知ることはできない他人と比べて落ち込んでいても、自分自身は前に進んでいけません。

そのことに気づく必要があります。