※本稿は、中野信子『脳を整える 感情に振り回されない生き方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「人類の歴史」は「妬みの歴史」
「妬み」の感情は、脳の「前頭前野」という部分で処理しています。知識や言語体系を生み出す部分でもあり、人間の脳では、この前頭前野の領域がほかの動物よりも多くを占めています。
よく「自分の頭で考える」といいますが、それは脳の前頭前野を働かせることとほとんど同義です。人間がここまで進歩し、社会を発展させてきた原動力は、まさにこの部分の働きにあるといえるでしょう。
前頭前野で生み出される妬みの感情は、いわば銃や刃物のようなものです。相手を傷つけるために使うと危険ですが、うまく使えば、とても便利な「道具」になり得ます。
例えば、誰かを妬んだときにその気持ちを克服しようとして、己を成長させることができます。自分にはないものを持つ者に追いつこうと試行錯誤し、新しい発明をすることもできるでしょう。そうして妬みをエネルギーに変えることで、人類はここまで成長してきたともいえます。
その意味では、人類の歴史は、いわば「妬み」とその克服の歴史ともいえるのではないでしょうか。
妬みは一般的に嫌な気持ちなので、すぐにでもなくしたいと思うかもしれませんが、人間である以上はなくなりません。むしろ道具として、うまく活かすことを考えるほうが、いいことをたくさん生み出す可能性が高まるでしょう。