構造改革をやらずにさっさと人員削減に踏み切る経営者の言い分
だが、その後、構造改革などやるべきことをやらずに人員削減に踏み切る経営者が増えていく。なぜ業績が悪化する前に構造改革をしなかったのか。2000年代に大規模リストラを実施した従業員5万人超の大手メーカーの元人事担当役員は後にこう述懐している。
「市場競争に敗れて赤字になることを会社としてなぜ止められなかったのかという思いがある。本来は経営が安定している時に構造改革をするべきだろうが、先が見えている経営者はそんなにいなかった。逆に先を見越して改革しようとすれば反発を招く。周囲の信頼や人望のある経営者であれば支持するかもしれないが、反発を恐れて改革に躊躇する経営者も多かった。結局、手を打たないままに業績が悪化し、リストラにつながった」
経営者の資質に欠け、さらに覚悟が不足していたことが“失われた20年”を招き、人員削減で延命を図る企業が増えたのだろう。
もちろん今でも長期雇用を重視している企業もある。その多くは「人を基軸」とする経営を掲げ、危機的状況に陥っても雇用を守ることを最優先する企業である。
今の大企業の考え方「雇用を守る」派vs「株主価値の増大重視」派
前出の元人事担当役員は今の大手企業の考え方は以下の2つに分かれていると指摘する。
① 雇用を守ることを前提に企業の成長を目指して改革を推進する企業
② 株主価値の増大など企業活力を重視した成長を目指して改革を推進する企業
この目的によって改革の中身は違ってくる。
当然、②の企業は人員削減も改革の重要な柱となる。①と②の企業を見分けるのは難しいかもしれないが、少なくとも2000年以降、2回以上のリストラを実施している企業は②のタイプと見て間違いないだろう。
しかし①の企業であっても雇用を守ろうとして改革を徐々に進めてきたが、最後は間に合わなくなってリストラに至った企業もある。