昼食時は肘と肘がぶつかるほど狭い

「でも、アレなんです。雑居での食事(朝夕)にはそんなふうに間隔を空けて座るルールがあるんですけど、工場の食堂で食べる昼食は、長テーブルなのでそのルールが適用されないんです。コロナ前から隣の人間と肘がぶつかるほど密ですし」

しかも、監視の観点で見通しを確保するためだろう、飛沫対策のパーテーションなどもなかったそうだ。飛沫対策に大きな隙がある。どうやら徹底されているとは全く言えないようだ。

こちらが頭をひねっていると、田中さんが口を開く。

「工場で私が何よりヤバイと思ったのは、イヤな受刑者とも接する機会が生まれてしまうということですね」

人間関係の話だろうか?

2020年8月、「オリンピック」の文字。開催か中止か世論が揺れていた時期だ。
筆者撮影
2020年8月、「オリンピック」の文字。本来の開催時期だったこの夏、世間は"第2波"に襲われていた。

用を足した後に手で拭いて、その手でせっけんを…

「人によって、衛生意識の度合いって違うじゃないですか。トイレを出た後、しっかり手を洗う方もいれば、指先しか洗わない方もいる。それこそ、刑務所みたいなところは、精神疾患を患っている人間も少なくないため、極端に衛生意識が低い人間もけっこういるんですよ」

例えば、田中さんの配属先の工場に、受験者たちの間でヤバイと評判の年配女性がいたそうだ。年齢は推定70代。

「その人、トイレに行ったら、紙を使わず手で拭くんです。ボケてるんでしょうか。手をウンコまみれにしてトイレから出て来て、流しに置いてある共同の固形せっけんを触るんです」

田中さんは思ったそうだ。こんな衛生意識の低い人間がウロウロしている場所に、もしもコロナウイルスが入り込んできたら、蔓延を防ぎようがないだろうな、と。

刑務所には特殊な事情とルールがあることから、新型コロナウイルスの感染リスクにさらされている。クラスターや重症者の発生を未然に防ぐため、全国の刑務所でワクチン接種が早急に進むことを期待したい。

出所後の不安が書き連ねてある。コロナ禍で、出所後の生活も先行き不透明になった。
筆者撮影
出所後の不安が書き連ねてある。コロナ禍で、刑務所を出た後の生活もより先行き不透明になった。
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