消費税は社会損失大、炭素税は社会損失減

図1で示したとおり、消費税課税以前の財市場では、需給を均等させる市場価格はMPで決まり、OMが取引量として決まっていたとしよう。そこで政府が予算の財源を確保する必要があると、QRだけ消費税を導入したとする。消費者価格が生産者価格よりQRだけ高くなるので、取引量はONに制限される。消費者は消費税の結果生じる価格上昇と需要減のため、水色で示したAQTCだけの負担を負い、生産者も値下げと生産減のためピンク色で示したCTRBだけの負担をするわけである。

消費税は社会に損失が出るが炭素税にはメリットがある

これを消費税の転嫁と呼び、両者の転嫁の負担割合は需要、供給曲線の弾力性(価格変化に対して需要、供給がどの程度の割合で変化するかを示す指標。グラフでは傾き)に依存する。そして消費税によって、社会全体は図1の緑色で示した三角形QPRの社会厚生の損失(死重損と呼ぶ)を被る。消費税の場合は、政府予算の財源確保のために税を導入すると、社会が損失を受けるのである。

また、消費税率が2倍になると4倍の被害が社会に及ぶ。図1で言えば、消費税額QRを長さが2倍になるように左側にずらすと、TPの長さも2倍になって、三角形QPR(死重損)の大きさは4倍に大きくなる。このように、三角形QPRの大きさは税額QRの2乗に比例する。

消費税には、法人税に比べて資本流出を妨げるなどの良い効果もなくはないが、日本にも西欧並みに高率の消費税をかけようとする議論は、以上のようなことを無視しているので極めて危険である。

図2は、炭素税のケースである。火力発電の需要はDD'で与えられ、供給は発電のコストSS'と考えられているが、実は電力単位当たりにSS*だけの大気汚染分が社会の負担になっているものとしよう。発電量はOMである。炭素税がないときには、火力発電会社はSS*部分を費用として考慮しないので、供給価格はMP、供給量はOMとなる。しかし社会にとっては汚染のマイナス分があるので、黄色で記したSS*P*Pのマイナスが生ずる。そこで炭素税QR分が課税されると、価格はNQに変わるが、発電量はONになり、死重損の三角形P*PQは発生しないで済む(環境汚染が減る)こととなる。

一言でいえば、財源を求める消費税は、需給にくさびを入れて価格機構(価格の自動調節機能)を邪魔して社会に損失を与える税である。それに対し、炭素税は価格機構の不備を補い環境を浄化しながら財源を上げられる望ましい性質を持った税だといえる。