「働き方改革」は進め方を間違えると、「ジタハラ(時短ハラスメント)」として問題視されてしまう。近畿大学の奥田祥子教授は「専門商社の企画部課長だった38歳の男性は、『ジタハラ』の責任を問われて、給与2割減の降格処分を受けた。一方、ジタハラを告発した部下は課長に昇進した。問題は複雑だ」という――。

※本稿は、奥田祥子『捨てられる男たち 劣化した「男社会」の裏で起きていること』(ソフトバンク新書)の一部を再編集したものです。

頭を抱えるビジネスマン
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「今こそ残業ゼロを主導するのが管理職の役目」

2017年、翌年に成立・公布が見込まれる働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)を見据え、専門商社の企画部課長を務める山岡健二さん(仮名、当時38歳)は、長時間労働の是正や柔軟な働き方を進める方策などについて熱弁を振るった。

「長い間、青天井だった残業時間にようやく法律で上限規制が設けられるのは、画期的なことなんです。今こそ残業時間の削減、いや法律が施行される頃には『残業ゼロ』が実現できるよう、真剣に働き方改革に取り組まなければならない。その先頭に立って主導していくのが、社員に近い管理職である課長の役目なのだと考えています」

具体的な取り組みについては、子育て中の社員の時短勤務の適用期間の延長をはじめ、始業と終業の時刻をそれぞれの生活や働き方に応じて設定できるフレックスタイム制を導入すること。さらに育児だけでなく、家族を介護している社員にも法律で定められた、介護休業を要介護者1人につき、93日を3回を上限に分割取得できるしくみをもっと柔軟に運用するほか、子育ても介護も該当しない社員には、残業を削減した分をリカレント教育(学び直し)などに活用してもらうことを検討中だという。