プライマリーバランス復活…財務省の巻き返し
【田原】その経済によかったことを、やめちゃった?
【藤井】財務省は、プライマリーバランス規律がなくなって3年間、悔しくて悔しくてしょうがなかったんです。
そこで、第二次安倍内閣で麻生さんが財務大臣になったとき、徹底的にレクして、プライマリーバランス規律を復活させてください、と頼んだ。これが2013年1月で、6月の骨太の方針でプライマリーバランス規律が復活しました。消費税の10%への増税も、同時に決めたんです。
【田原】いま、プライマリーバランスはどうなっていますか?
【藤井】コロナ状況下ですから、赤字が非常に拡大しています。内閣府が2021年1月21日に経済財政諮問会議に提出した「中長期の経済財政に関する試算」の見込みによると、2020年度(2021年3月まで)のGDP成長率は実質マイナス5.2%で名目マイナス4.2%。2021年度(22年3月まで)は成長率実質4.0%で名目4.4%。2021年度中には、日本経済はコロナ前の水準に戻ると見ています。
プライマリーバランス赤字の対GDP比の見込みは、2020年度12.9%、21年7.2%です(以上、いずれも%に「程度」がつくがここでは略)。GDPの13%近いということは、額にして70兆円くらいですね。
内閣府の試算にはグラフがついていて、うまく成長するシナリオ(実質成長率が2025年以降2%近い)が実現したとして、プライマリーバランス黒字化は2029年度。早くて10年くらい先ということです。
PBにとらわれ、コロナ対策もデフレ脱却も失敗した
【田原】内閣府の試算が出る直前の2021年1月18日、麻生財務相は財政演説で、2025年度のプライマリーバランス黒字化を目指すといった。コロナ禍がそろそろ1年なのに、前と同じことをいっている。なんで?
【藤井】まったくなにも考えず、ただ財務官僚の作文を読んだだけでしょう。
【田原】いずれにせよ、いつごろプライマリーバランス黒字化なんてことにこだわっていては話にならない、ということね?
【藤井】そうです。全然ダメです。それをやっている限り、日本はまともなコロナ対策も、防災対策も、防衛対策も、そしてデブレ脱却もみな、まったくできません。
【田原】これを続けている日本政府の責任者は誰?
【藤井】もちろん、菅義偉内閣総理大臣であり、麻生太郎財務大臣です。