1 固定の安心代は割高 変動との金利差は過去最大級

限界でも年収の7倍 大前提は借りすぎない

私がまず伝えたい結論は「現時点では変動金利が有利である」という一点です。判断の軸は2つ。これから利上げがどこまで進むか、そして仮に変動金利が固定金利を上回ったとして、高い状態が何年続くかです。

足元では2.13%の金利差で変動金利が有利です。試算でも裏づけられます。5000万円を35年返済・元利均等で借り、変動金利1%・固定金利2.5%を出発点に比較すると、政策金利が1.0〜1.5%で波打つメインシナリオでは変動が圧勝。両者が並ぶのは政策金利が3.75%、変動金利にして約4%まで跳ね上がった場合ですが、日銀の利上げに対する慎重な姿勢を踏まえると考えにくいです。元利均等返済では利息総額の約半分を最初の10年で支払うため、後半の金利上昇は影響が限定的。人口減が進む日本では賃上げが持続しますが、需要減も続くため高金利が長期間続くことは想定しにくく、変動金利有利は崩れません。

なお、同じ変動金利でも、契約時期などで差が出ます。適用金利は「店頭金利-引き下げ幅(優遇幅)」で決まりますが、店頭金利が長く横ばいだった一方、引き下げ幅は2016年のマイナス金利政策を境に競争で大きく広がりました。09年ごろは1.0%程度だった割引が、22年ごろには2.1%まで拡大しています。しかもこの幅は契約時に固定されるため、引き下げ幅の小さい時期に借りた人ほど割高な金利のまま取り残され、その差は完済まで残り続けます。借り換えれば、いまの大きな引き下げ幅を取り込めます。

上の表は金利1.5%↓1.0%への借り換えで得られる効果を残高・残存期間別に示したもの。残高3000万円・残り20年なら諸費用差し引き後で約50万円、残存14年でも得になる計算です。モゲチェックの26年5月のデータでも、借り換え検討者の現在の平均金利は1.46%、借り換え先は0.98%と、表と同じ水準で動いています。ただし借りすぎはNG。年収倍率は5倍が目安で上限は7倍です。

2 平均180万円のムダ金 ローン放置の恐ろしい代償

適用金利1.2%以上なら今すぐ借り換え検討

すでに住宅ローンを組んでいて適用金利が1.2%以上なら、私は借り換えの検討をお勧めします。住宅ローンは家計の固定費のなかでも最大級で、数千万円を長い年月をかけて返していくものです。0.1%でも3000万円・35年・元利均等だと、総額では約56万円の差になります。一度下げた効果は完済まで何十年も続きますから、借り換えは固定費をまとめて軽くできる数少ない手立てになります。

借り換えとは別の銀行で新たにローンを組み、今の借り入れを一括で返す手続きです。得られるメリットのわりに手間はさほどかかりませんが、見直しをせずに放置している人は多いです。ローンとは「一度組んだら完済まで手をつけないもの」と思い込んでいるのでしょうか。あるいは面倒で大変そうだと気後れしているのかもしれません。

放置する人には、典型的な2つのパターンがあります。一つは5〜10年前にメガバンクや地方銀行などのリアル系銀行で借りたまま動いていない人です。金利の低いネット銀行の存在を知らず、不動産会社に勧められるまま借りた人も少なくありません。リアル系銀行は店舗や人員を抱えるぶん、運営コストが金利に乗りやすく、金利が高く設定されているケースも多いのです。

もう一つは「固定金利期間選択型」で、固定期間が終わった人です。例えば、10年を選択していた場合、優遇幅が縮む11年目に返済額が跳ね上がります。10年間の負担に慣れてしまって、返済額が増えているのに気づかない人もいます。仕組みを理解しないまま、変動金利で2%を超える金利を払い続けている人さえいます。

では、借り換えるとどれだけ得になるのか。複数の銀行を一括で比べられるサービス(住宅ローン比較「モゲチェック」)の利用者データでは、平均のメリットは約180万円にのぼります。実際に借り換えた利用者のおよそ4割が100万円以上を削減でき、なかには2000万円に届いた例もありました。手続きの多くはネットで完結します。入力項目こそ100ほどありますが、書類集めを含めても実作業は2〜3時間ほどで完了します。3時間で平均180万円なら、時給に直せば60万円です。家計の見直しのなかでも屈指の効率といえるでしょう。借り換えの効果は残元本に対して生まれますから、残高が大きい人ほど取り戻せる金額も大きくなります。

借り換えには事務手数料や登記費用などの諸費用が、残元本の3%弱かかりますが、借入額に上乗せする人が大半です。なお、「費用がかかるならメリットは少ない」と考える人もいますが、大切なのは「費用を上回る金利低下が見込めるか」ではないでしょうか。

(構成=渡辺一朗 図版=大橋昭一)