リーダーが責任回避しているよう
少しずつ増えていたアメリカメディアの東京オリンピック・パラリンピック報道が、ここへきて批判的なアングルになってきている。開催が2カ月後に迫っているからでもあるが、アメリカでは一度でもワクチンを接種した成人が56%に達しているのに比べ、日本での接種は1.1%と相当遅れているうえ、再び感染が拡大していることが知られ始めたからだ。
批判報道のポイントを見ていくと、これが日本だけの問題ではなく、オリンピックという巨大イベントの将来、さらに資本主義と人権の問題にも関わる深刻な事態であることが見えてくる。
アップルがiPhoneに搭載しているニュースアプリは、テレビや新聞をチェックしない若者も日常的に見ている。3日付のオーディオニュースのトップは、「オリンピックは今年行われるのか?」という見出しで伝えた。
ワシントンポスト紙の記事を引用した内容は、開催まで3カ月を切った日本の医療は逼迫し、オリンピックが本当にできるのかという疑問が高まっている。各地で病院ベッドが不足する中、医療関係者は多数のアスリートや関係者が来日することに懸念をあらわにしている。
菅義偉首相は「遂行するかどうかの決定権はIOCにある」と、自ら距離を置いているように見える。アメリカ人がこれを聞く限り、リーダーが責任を回避しているように受け止められても仕方ないと感じられる言い方だ。
布マスク2枚と消毒液1本だけ
ボランティアの深刻なリスクを伝えたのはニューヨーク・タイムズ。東京の記者がボランティアや関係者への取材を通じて書かれた非常に読み応えがある記事で、他メディアにも引用され広く読まれている。
それによれば、7万8000人のボランティアには布マスク2枚と消毒液ボトル1本が支給されるだけで、あとはソーシャルディスタンスの規定だけ。ワクチンも受けられない。これでどう彼らを守るのか? これでは世界中のアスリートと接触することでスーパースプレッダーになる可能性が高いと懸念するボランティアの声を伝えている。
また、あるボランティアは自分が知らずに感染し、アスリートや家族に感染させてしまうのではないかという不安を感じている。そのため自分で会場に近い高いホテルをとったり、公共交通機関を避けるために自転車を買ったりするという苦肉の策が紹介されている。
同紙は、日本の当局が安全性を世界にアピールする中、自己責任で自分と家族そしてアスリートの安全をも確保しなければならない状況になっているとコメント。また開催延期して1年が経つにもかかわらず、安全対策を数値に基づいたものではなく経験と勘だけに頼ったとかなり批判的な書き方だ。