筆者は東京大会について、中止でも開催でもどちらでも構わないという立場だが、どちらを選択しても、「日本は絶対に人命を優先します」とはっきり打ち出すことが必要だ。
「決められない国」になってはいけない
開催なら今すぐ巨額の予算を組んで、ボランティアにも看護師にも高給を払い、外部との接触を遮断する「バブル」方式で生活してもらうなどの対策をとる。彼らにワクチンを優先接種、または手厚い検査体制を整え、その必要性を国民に丁寧に説明し、理解を得る。来日するアスリートたちにも同様のケアを徹底的にする。
それができないなら中止するしかないが、人命優先なら誰も反対することはできないし、多くの犠牲を払っての決断はリスペクトされるだろう。
アメリカ人はそれを今回のコロナ禍で学んだ。世界最悪の感染国から最速のワクチン接種国になれたのは、経済優先による失敗を繰り返すまいとしたバイデン政権が巨大な予算と人材をつぎ込み、何がなんでも人命優先でコロナを収束させると決めたからだ。巨大資本主義国の体力があったからできたという側面もあるが、日本にもその体力はまだ残っているはずだ。
一番リスキーなのは、中止と開催、どちらを選ぶにしろ政府と組織委がなし崩し的に決断することだ。そうなると日本人は政府への信頼だけでなく、自分たちの国そのものに対する自信さえも失ってしまうだろう。