20代独身で年収倍率8倍超の物件を購入する時代

マイホーム購入で、充実した日々を送る梅澤さんだが、ちょっと冷静になってどれだけの借金を抱えることになったのか考えてみよう。

相場よりも割安だったとはいえ、物件価格は4890万円。年収600万円の梅澤さんにとって8倍以上にもなる。

かつて、1990年代初めごろ、東京や大都市圏でも「購入できる物件価格は平均年収の5倍程度が目安」などと言われていた。

実際、国土交通省の令和2年度住宅経済関連データを確認してみると、首都圏の住宅価格の年収倍率について、マンションの場合、1999年は4.8倍だった。それに対して、2019年は7.4倍と、この20年で1.5倍も増加している。

それもそのはず。物件価格(平均)が、1999年の4130万円から2019年には5980万円とこちらも1.5倍に上がったからである。

その一方で、マンションの床面積は狭くなり、マイホームを購入する人の年収は50万円もダウンした。

段ボールをあらかた開けて、昼寝する男性
写真=iStock.com/SetsukoN
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ちなみに、変動金利はそれほど変わっていない。国土交通省のデータでは、1999年の変動金利は2.375%。2019年は2.475%だから、ずっと低金利水準が継続している。

その上、金融機関間の熾烈な住宅ローン金利競争によって、いわゆる店頭に表示されている基準金利から優遇金利が割り引かれた低い金利が適用され、今では、梅澤さんのように、20代の若いサラリーマンでも4000万~5000万円の住宅ローンが組めてしまうのだ。

20年以上もFPとして相談を受けている筆者としては、若い世代が、このような高額な借金を背負うことに対して、あまりにも危機感が薄いのではないかと正直ビクビクしている。

なぜなら、この間、住宅ローン金利が低くなり、借りやすくなったこと以外、将来の先行きの不透明感は増すばかりだからである(さらに、コロナ禍の影響も加わった)。

若い世代ほど、「自分たちの頃になると年金がもらえないかもしれない」と感じる人が多いはずなのに、自分自身の収入は35年間変わらない(あるいは増える)前提で住宅ローンを組むことを矛盾しているとは思わないのだろうか?