「勢い」でマイホーム購入に踏み切った人が注意すべき点3つ

とはいえ、梅澤さんに限らず、マイホーム購入には「勢い」というのも非常に重要なファクターではある。

もともと結婚や出産、子どもの進学などのライフプランに合わせて住宅購入を検討して、資金を貯めていた人が、気に入った物件が見つかり、住宅ローン減税など手厚い優遇措置に後押しされて購入するパターンが王道だろう。しかし、条件やタイミングが良いのに、どうも勢いに欠けて、契約まで踏み切れないといったケースも見受けられる。

要は、あれこれ考えすぎて決断できないのだ。もちろん、高額な買い物だけに、慎重になるのは当然のこと。ただし、いくら十分に検討しても、住宅購入後に何か起こるか分からない。肝心なのは、その何かに対して柔軟に対応できる家計の体力がどれだけあるのかである。

住宅模型の前で電卓をはじく男性
写真=iStock.com/kuppa_rock
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マイホーム購入決断には「勢い」は必要だが、十分な準備もなく「勢い」だけで購入してしまった場合、後々こんなはずではなかったという状況に陥る可能性が高くなる。

そこで、梅澤さんのように、すでに高額な住宅ローンを組んでマイホームを購入してしまった人が注意しておくべきポイントは、以下の3つである。

① 変動金利の動向はこまめにチェックしておく
② 住宅購入後の家計の変化に注意する
③ 将来への資産形成も少しずつスタートさせる

まず、①について、変動金利のメリットやデメリットはさまざまな媒体で紹介されているので、ここでは省略するが、変動金利で借りるということは、一生、市場金利の動向に注視するという作業や緊張感がセットで付いてくること覚悟しておこう。

そして、ネット記事などで、「金利が上昇した場合、固定金利に変更すれば良い」などと書かれてあるが、実際には、かなり難易度が高いことも知っておきたい。

なぜなら、金利のしくみで、変動金利に影響を与える「短期金利」よりも、固定金利に影響を与える「長期金利」の方が先に上昇するからである。つまり、変動金利が上がってきたので、固定金利に切り替えようと思っても、こちらはすでに上がってしまっているというわけだ。

そもそも、変動金利で住宅ローンを組む場合は、この金利のしくみを十分理解していただきたいのだが、前掲の梅澤さんいわく、「金利の選択が一番難しかったですかね。結局、YouTubeを見て決めました」とのこと。今や何でもYouTubeで学べるとは恐れ入った。

続いて、②については、賃貸と購入の年間コストは桁違いだということである。そもそも、狭い賃貸から広い分譲に引っ越しをすれば、水道光熱費は増える。その上、家具や生活雑貨をそろえることになれば、しばらくは支出増が続く。購入後に増えるのは住宅ローン返済だけでなく、固定資産税や都市計画税(物件にもよるが都内なら年20万円前後)、修繕積立金や管理費(同、月3万円~)、さらに火災保険や地震保険など、どれくらいコスト増になるかをきっちり試算することが重要である。

最後の③について、20代といえば、貯めクセをつけて、資産形成をスタートさせたい大切な時期である。そこに住宅ローン返済やそれ以外の支出増が加われば、貯蓄や投資どころではないかもしれないが、少額からでも良いので、積み立てを始めてほしい。

ちなみに、2021年度税制改正によって、住宅ローン控除の適用要件が緩和されている。現行では、床面積要件50m2以上が対象だったが、合計所得金額1000万円以下という条件で床面積40m2以上50m2未満に対する住宅ローンにも適用される。

物件価格が高騰しているためだと思われるが、床面積要件が緩和されたことでシングルや二人世帯など若い世代が買いやすくなった一方、無計画で安易な住宅ローンを組み、貯蓄できない人が増えるのではないかとも危惧している。

住宅ローン減税については、1%の以下の超低金利下なら、諸経費も含めたフルローンを組み、住宅ローン残高の1%の還付を受けた方がおトクという状況が問題視されている。

会計検査院の報告(※)によると、「1%以下で借りて住宅ローン控除の適用を受けている人の割合は78.1%に上って」いるそうだ。

今後の税制改正では、「1%」の控除率が見直され、実際の支払い利息を上限とするなどの案も出てきている。

しっかり頭金を準備し、返済できる額を考慮して物件を購入し、住宅ローン計画を立てた人が適正な恩恵を受けられるような制度を望む。

※会計検査院「租税特別措置(住宅ローン控除特例及び譲渡特例)の適用状況、検証状況等について

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