必要なのは部署間コミュニケーションではなく責任者の異動
ならば、サイロのように分離され、コミュニケーションが遮断された会社の構造を変える方法とは何でしょうか。
もっと部署間のコミュニケーションを取ろう! とスローガンを掲げても効果はありません。幸せでない夫婦に「お互い心を開いてもっと話をしましょう」と助言しても仕方がないのと同じです。夫婦の関係において対話の不在が深刻な問題だということは、2人ともすでにわかっています。
同じように赤字会社や部署のメンバーも、意思疎通の不在が問題であることを承知しています。知っていながら対話できないのが彼らの現実なのです。
このような場合に私が行っていた得策があります。サイロに所属する人材、特に責任者を入れ替えるのです。いわばローテーションさせるわけです。誰も予測不能なほど劇的に交代させると、サイロ間の閉鎖的な構造は瓦解し、コミュニケーションが始まります。
たとえるなら、サイロは自分たちだけの王国です。すでに製品開発サイロ、製造サイロ、マーケティングサイロがあるとしましょう。各サイロには、まるで孤島の王国の王のごとくリーダーが君臨しています。他のサイロとの交流は完全に部下に任せ、自分は王国の頂上で孤高に君臨しているのです。
強制的な配置転換は部下とのコミュニケーションを生む
彼らは製品開発の王、製造の王、マーケティングの王です。みな自分の現在の地位に満足しています。ある社員が製品開発の王に、少しは別の方法で開発してみてはどうでしょうかと進言すると、製品開発の王はそれを王権への挑戦と受け取ります。そして「そんなことはとっくに私がやっている。おまえは黙っていろ!」と脅しつけます。
ある程度はうなずけることかもしれません。製品開発サイロで長く仕事をしてきたおかげで、彼は「製品開発の王」になれたのでしょう。
そこで私が取る方法はやや極端です。ショックを与えなければサイロの閉鎖性は解体しませんし、王権は瓦解しません。私が取る方法は「製品開発の王」をそのサイロから出し、「製造の王」の椅子に座らせることです。それも何の前触れもなく、電光石火のごとく人事発令をしてしまいます。
当然「製品開発の王」は当惑するでしょう。王に推戴されてはきましたが、彼は開発部門のみでの王だったにすぎず、製造については何一つ知りません。新たに推戴された王は仕方なく、そのサイロに所属する部下社員の話を聞き始めます。コミュニケーションを取らざるを得なくなるのです。
こうして電撃的に配置換えをすることで、別の肯定的な効果が表れます。自分がいつ、どのサイロに異動になるかわからないため、普段からサイロ間で情報を共有し始めるのです。開発、製造、マーケティングが互いの対話チャンネルを開き、前もって他のサイロとの協力体制を作っておきます。
残念ながら私が観察した限りでは、自発的にこうしたチャンネルが開くことはありませんでした。