対立した部署を和解させるためには責任者を交差配置すればいい

人は安定した状況にいると、絶対に自分を変えようとしません。今いるサイロにとどまろうとするのは、その方が楽だからです。ある程度強制的な要素が動員されなければ変化は起こらない。これが私の観察の結論です。

リーダーはこうした強制的な方策を思い切って推進できなければなりません。もちろん一部例外もあります。好奇心旺盛な人は、外部からの強制力がなくても自ら変化しようとします。そういう人と出会えたらリーダーにとっては大変な幸運ですが、そんな人材にはめったにお目にかかれません。

もちろん、中小企業のように制限された人数で運営される組織では、こうした配置転換を適用するのは容易ではないでしょう。しかし少しの余裕があるなら、いくつかの部署だけでも試験的に運営してみるのもよいと思います。

こんなことがありました。二つの部署のチーム長同士が事あるごとに衝突している、という報告が上がってきたのです。責任の押し付け合いを超え、対話チャンネルをまったく閉ざしたまま対立しているという報告でした。

そこで私は人事チーム長を呼び、2人のチーム長を交差配置するよう指示を出しました。今まで争うだけだった2人は突然立場が入れ替わり、向き合わなければならなくなったのです。

以降は部署間のいさかいは消え、互いに協力関係を構築したという最終報告を受けました。相手を理解しようとする努力がどんなに重要なことか思い知らされた経験だったそうです。

限界を悟った管理職は自ら退陣を認める

トップを入れ替えることでサイロの閉鎖性を破壊してきましたが、成功確率はおよそ3分の1といったところです。

他のサイロに異動させた人材のうち3分の1は新しい環境に適応し、それなりの成果を出しました。また他の3分の1は1年程度、成果が出るまでに忍耐心を持って見守る必要がありました。

最後の3分の1は成績不良者に分類されてしまい、残念ですが人員整理の手順を踏むしかありませんでした。数多くの赤字事業部門を引き受けてきたため、私はたくさんの人を解雇せざるを得ない、厄介な立場に立つ時がよくありました。

解雇や経済不況の中で、自分の持ち物を持って仕事を辞める日本のサラリーマン
写真=iStock.com/YinYang
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ですが、特に不満を訴えられたり、抵抗を受けたりしたことはありません。他のサイロに異動する配置転換によって、自分の欠点や限界をはっきりと悟ることになるからです。限界を悟った人は、組織全体のために自らの退陣を認めるようになります。

限界を克服する人は成長しますが、その限界の前でもう一歩、前に進めない人は残念ながら組織のために辞めてもらうしかありません。そこで次世代リーダーの育成のためにも、大体3年に一度、必ずサイロのトップの入れ替えを実施しました。

もちろん最初からそんな辞令を出していたわけではありません。私の場合、この実験的な配置転換を実行できたのはサムスン電子社長に任命されてからです。