日本では夜の酒席などの「非公式な場」でなされることが多くあります。一方のドイツでは「公の場」で、しかもドヤ顔で発言をする著名人や有識者が度々問題になっています。

昨年開かれたFDP(自由民主党)の党大会。党首のChristian Lindner氏が退任する女性の党幹事長Linda Teuteberg氏に別れのスピーチをしました。

スピーチの中で「リンダと私は過去15カ月間のあいだ、300回ぐらい朝を一緒に迎えました」(1分32秒のところ)と語り、あたかも一緒に泊まったかのような言い回しをしました。

この動画を見ると、同氏が発言の直後にあえてをおき、会場の笑いを待っていることが確認できます。そして実際に会場で笑いが起きると、同氏は待ってましたとばかりに「毎朝ルーティーンとなっていた政治について話していた電話のことを言ったまでです。あなた方が考えているようなことではありません」と続けています。

性的なジョークを言ったことに対する申し訳なさのようなものは全く感じられず、この手のジョークを言うことに慣れている様子です。

「ジョークのつもり」で辞任に追い込まれたドイツの評論家

この発言は、女性蔑視だという非難の声がドイツのメディアやSNSなどであがりました。ところが辞任した森元会長とは違い、同氏は謝罪はしたものの現在も党首を務めています。

一方で、「老紳士のジョーク」が原因で辞任に追い込まれた人もいます。ドイツの評論家でジャーナリストのRoland Tichy氏です。長年Ludwig-Erhard-Stiftung e.V.(ルートヴィヒ・エアハルト財団)の会長を務め、優秀なジャーナリストに与える賞を決定するDJP(Deutscher Journalistenpreis)の審査員でもありました。

ところが同氏は昨年、自身が発行する雑誌『Tichys Einblick』(「Tichyの洞察」という意味)で、SPD(ドイツ社会民主党)の女性政治家Sawsan Chebli氏の将来性と資質を「僕の友達のジャーナリストたちは『高齢男性が多いSPDの中におけるSawsan Chebli氏の長所はGスポットがあることだけだ』と言っている」と書きました。

政治の話に全くそぐわない、性的な表現を活字にしたことが問題なのは言うまでもありません。さらに卑怯なのは同氏が「自分がそう思う」と発信せず、第三者(「友達のジャーナリストたち」)の発言として堂々と載せていることです。