「体育出席率」と「東大進学率」の相関関係
遊びやスポーツの場面で、自分で考えて取り組み、大人からその成果を褒められると、子どもにとっては貴重な成功体験となり、身体を通して“よい体験”として記憶に刻まれます。こうした体験を日常の中で重ねていくことで、脳の欲望や感情を扱う大脳辺縁系を刺激し、運動が「楽しい」「達成感」という意欲につながります。そして「次は何をやろうかな?」と先の予定を計画しながらイメージを繰り返すことで、さまざまな知的活動をおこなう大脳皮質を使いつつ、脳全体のネットワークがつながっていきます。
「脳の実行機能」が育ち、成功体験による意欲向上を積み重ねていくと、スポーツはもちろん、勉強の面でも確実に好影響を及ぼします。実際に運動能力の向上が脳の発達にもつながっていることを示す事例があります。
ある有名私立中高一貫校では、体育への出席率と東京大学への進学率に相関関係があることがデータで導かれました。6年間一度も体育を休まない生徒ほど、東大への合格率が高かったということです。また、0時限目に体育を取り入れた高校で、多くの生徒の成績が上がったという研究結果もあります。こうした事例は、運動することが脳や勉強にもよい影響を与えることのひとつの証明と言えるでしょう。
小さな頃から運動に親しむことで、感情がコントロールできるようになり、キレなくなる。そして集中力や脳の実行力が高まることで学力にも好影響がある。「子どもには自分の思い描いたことを実現できようになってほしい」と考えるのなら、思い切り身体を動かすことから始めてみましょう。運動は子どもの将来に役立つ“最高の教材”なのですから。
(文=佐久間一彦)