コロナ禍でいよいよ始まる大学・高校・中学受験……合否を決める重要な要素のひとつが読解力だ。国立情報学研究所の新井紀子教授は「全ての教科書を正解に理解できる小学生はクラス内の2、3人です。また子供の語彙量は家庭環境の影響が大きく、小学校入学時点で3〜4倍の差がつくこともある。AIが台頭する時代、読解力なしには仕事を選べません」と指摘する――。

※本稿は『プレジデントFamily 2021年冬号』の記事の一部を再編集したものです。

「教科書を読める子」はクラスにたったの2、3人!?

学校の授業のベースになる教科書。各学年の子供の知識や理解力に合わせてつくられているから「読めるのは当たり前」と思っていないだろうか。

「残念ながら、日本の子供の大半が教科書を読めていません。小学生でいえば、全教科の内容を正確に読めているのはクラスの2、3人でしょう」

こう指摘するのは、『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の著者で、国立情報学研究所教授の新井紀子さんだ。新井さんの言葉に従えば、クラスの9割は教科書を読めていないことになる。一体、どういうことなのだろう。

「『読む』という言葉から多くの人がイメージするのは、ひらがな・カタカナ・基本的な漢字を“文字として読める”ことでしょう。いわゆる識字です。でも、それだけでは読めたことにはなりません。文章を読んで正確に意味や内容を理解することができて初めて読めたといえる。日本の子供たちはこの読解力が弱いのです。ところが子供たちに『教科書を読めていますか?』と聞くと85%が読めていると答えます。読めない子は“読める体験”をしていないので、“文字が読める”こと=読めると思っているんですね」

算数の計算問題は解けるのに、文章題になるとわからなくなる

読解と聞くと、真っ先に思い浮かぶのは国語だ。教科書にある文学作品や評論などの読解が授業の主軸になるが、新井さんが指摘する読解力はその類いではない。

『プレジデントFamily 2021年冬号』(プレジデント社)
『プレジデントFamily 2021年冬号』(プレジデント社)

「私は『汎用はんよう的読解力』と呼んでいますが、算数、理科、社会などすべての教科で求められる力です。国語の心情読解の場合、作者の思いを読み取るといった、いわゆる行間を読む力を養い、解釈に幅があります。でも、算数、理科、社会でいろいろな解釈があったら困りますよね? 文章に書いてある事実を正確に読み取る。それが汎用的読解力です」

教科書を読めていない子供が多い理由は、この汎用的読解力が身についていないためだと新井さんは考える。算数の計算問題は解けるのに、文章題になるとわからなくなる子供がよくいるが、それも同様だ。解けないのではなく、問題文が理解できないのだ。

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