「本物の興奮」を経験することで、脳が発達する

例えるなら、興奮を味わったことがない脳は、徐行運転の経験しかない車のようなもの。それではブレーキの使い方を練習できません。スピードを出すからこそ、ブレーキの使い方がわかるのです。興奮を味わってそれを抑えるというのは、これと同じことです。

ただし、気をつけなければいけないのは興奮の質です。スマホやゲームを使って騒いでいる子どももいますが、そうした興奮は本物の興奮ではありません。体を動かすことのようにさまざまな感覚、身体のあらゆる場所への刺激を伴う興奮こそが本物の興奮で、子どもの脳の発達を促します。人は身体を動かすことによって、脳の発達が進んでいくのです。

健全な興奮を経験せず、ゲームで偏った興奮のみを経験してきた脳は、ブレーキ機能を持っていません。その結果、感情のコントロールができず、ふとした瞬間にキレるという行動に走るのです。これが現在の若者が突然キレるメカニズムのひとつ。SNSで瞬間的にカッとなり、心ない誹謗中傷に走る根本の原因も同様で、自分をセーブできないのです。子どものうちに運動を通じて身体を使った興奮と抑制を経験することは、成長していく上で、とてつもなく大事なことなのです。

引く動作は、足腰の力を目いっぱい使います。人数がそろえば、つな引きはかなり有効なトレーニングです
画像=『5歳からの最新!キッズ・トレーニング』
引く動作は、足腰の力を目いっぱい使います。人数がそろえば、つな引きはかなり有効なトレーニングです

運動能力向上は、将来の勉強や芸術活動でも役立つ

子どもの頃から運動に親しみ、体力をつけていると、心もタフになります。運動によってつけてきた体力は、学年が進むにつれて難しくなる試験や、受験勉強などを乗り越える際にも必ず役に立ちます。「身体を動かして汗をかくとスッキリする」という経験を積んでおくことで、勉強続きでモヤモヤしている時でも、不安やストレスに対応できるようにもなっていくでしょう。

身体を動かしていれば、運動能力も向上します。ここで言う運動能力とは、「自分がイメージしたことを身体を使って実行する能力」のことを指します。つまり、スポーツに限らず、勉強や芸術活動においても、「実現したいことをイメージして実行できる力」のことです。この運動能力を子どもの頃から高めておけば、スポーツのみならず、いろいろな場面で効果を発揮します。

登り棒をしたり、的当てをしたりという遊び、あるいはボールを打ってみる、投げてみるというスポーツで、「こうやってみよう」と思い描いて、それを実行するために「どうしたらできるか」を考えて工夫をすることは、脳にとってきわめて大事なことです。予測を立てながら、身体を動かす遊びやスポーツは、「目的的活動(特定の目標到達を目指しておこなわれる行動)」を達成するために非常に大事な「脳の実行機能」を育てるのです。

傾斜のきつい斜面や崖への上り下りは、子どもが大好きな活動。跳び箱などで人工の崖をつくって体験させてあげて
画像=『5歳からの最新!キッズ・トレーニング』
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