住宅街で遊び回る子ども=「道路族」
「道路族」
――というワードを、あなたはご存じだろうか? もちろん、この場合の「道路族」とは、田中角栄や青木幹雄といった族議員のことではない。
ここでいう「道路族」とは「住宅街における路地や付近の公道において、あたかも公園や庭のごとく我が物顔で遊びまわる子ども(と、その親たち)」のことを差す。当初はあくまで局所的なネットスラングとして流通していたにすぎないワードだった。しかしSNSが(とりわけ主婦層に)普及するにつれ「悩んでいるのは自分だけだと思っていたがそうじゃなかった。自分と同じような被害を受けていた人がこんなに大勢いたのか」と多くの人が共鳴。「道路族」というワードが徐々に市民権を得て、被害に対する不満や怒りが連鎖的に拡大していった。
着々と市民権を得た「道路族」というワードは、ついに全国紙にその名称がはっきりと示されるまでになった。朝日新聞で「道路族マップ」という「道路族」の被害を受けた人びとが、その場所や内容を地図上にシェアするウェブページが取り上げられ、大きな話題となったのである。
(中略)
サイトを作成・運営するのは、ウェブ開発業の40代男性。メールでの取材に対し、「道路族問題はご近所ハラスメントだと思う。たばこのポイ捨てや立ち小便、犬のふんの放置が許されなくなったように、時代とともになくなる一助になれば」とその目的を答えた。
男性はフリーランスで、自宅での仕事を12年ほど続けているという。以前住んでいた自宅前で道路遊びが始まり、仕事ができる状態ではなくなった。「問題が解決していない場所を共有し、引っ越すときの場所選びの材料にしたい」と、サイトを開設したという。
朝日新聞『路上で遊ぶ子はハラスメント?場所まとめたマップに賛否』(2021年1月28日)より引用
「不寛容だ」vs.「被害を受けている」
こうしたページに対して、SNSでは激しい賛否が巻き起こった。「遊ぶことは法的に禁じられていない」「不寛容だ」といった批判的な声がある一方で、「引っ越しや住宅購入の際の参考になる」「迷惑な人間がいることが示されているだけだ。それのなにが悪い?」といった声も聞かれた。
また、個人情報保護やプライバシーの観点からも懸念が生じている。たしかに、具体的に個人が特定できるような情報は書かれておらず、あくまで「被害体験を共有しているにすぎない」という建前がある以上、なんらかの権利を侵害しているとはいいがたい。また、管理者も個人からの申し立てがあった場合は削除に応じるといったリスクコントロールの対応もとっているという。