「動かない生活」で筋肉と骨が老化し、転倒の危険性も
新型コロナウイルス感染拡大による「おこもり生活」も2年目に突入した。ステイホームの長期化で懸念されるのが活動量の低下だ。
筆者も、運動不足に危機感をもつ一人。もともと運動習慣はないが、取材に出かけるだけでも1日に8000歩くらいは自然と歩いていた。しかし、今は取材の多くがオンラインとなり、家から一歩も出ない日もざらにある。1日の歩数がわずか119歩という日もあり衝撃を受けた。以前と比べて活動量は減っているにもかかわらず、夕方になると疲れやすい。
慢性的に活動量が低下すると私たちの心身にはどのような悪影響が現れるのだろうか。東京・砧にある「そしがや大蔵クリニック」院長で内科医の中山久徳先生は、「“動かない体”から“動けない体”となり、悪循環に陥る」と警鐘を鳴らす。
「活動量が減ると、心肺機能低下や消化機能低下、筋肉の萎縮など体の働きが衰えてきます。それが進むと、“動かない体”から“動けない体”となり、悪循環に陥ります。体を支える骨の老化も加速し、進行すると『生活不活発病』という病気に発展する可能性も出てきます」(中山先生)
若い世代にも広がりつつある「生活不活発病」
厚生労働省によると、“生活不活発病”とは学術用語でいう「廃用症候群」であり、「“動かない”状態が続くことにより、心身の機能が低下して“動けなくなる”こと」を指す。動かない状態が続くと、歩くことが難しくなったり疲れやすくなったりして動きにくくなり、ますます生活不活発病が進んでいく。家の中でつまずく、転ぶといったことも増えるという。
「生活不活発病」は当初、災害などで避難所生活を送る高齢者に多発する傾向があったようだが、コロナ禍で運動機会が減少している今、年代を問わず心身の機能低下を引き起こす可能性が高まっているといえる。
「動かないと骨や筋肉が衰えるだけでなく、手足の動きと脳がうまく協調できず、動きが鈍くなり転倒などにつながります。さらに、骨が弱っているので骨折を引き起こす可能性が非常に高くなります」(中山先生)