ある中高一貫校で、6年間一度も体育を休まない生徒ほど東大への合格率が高まるというデータがある。これはどういうことか。スポーツトレーナーの木村匡宏氏は「小さな頃から運動に親しむことで、集中力や脳の実行力を高められる。運動は子どもの将来に役立つ“最高の教材”だ」という――。

※本稿は、木村匡宏『5歳からの最新! キッズ・トレーニング』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

子どもが動きたがるのは、脳の発達のため

子どもには将来、自分の思い描いたことを実現できるようになってほしい。大人なら誰もがそんなふうに考えるのではないでしょうか? これを最短で叶えるために、今すぐできることがあります。それは「運動(=身体を動かすこと)」です。

運動することで体力がつく、身体が丈夫になるといった身体的な好影響があることは想像できると思います。ただそれだけでなく、運動は脳にも非常に良い影響を与えるのです。人間は脳の指令によって身体を動かしています。脳はバランスよく全体的に発達するのではなく、場所によって司る役割が決まっていて、それぞれが順を追って発達していきます。

まず幼児期に発達するのが、運動をコントロールする「運動野」と呼ばれる場所。小さな子どもがとにかく動きたがるのは、この場所が発達しつつあるから。これは脳が発達するために必要なことで、子どもは動くことで自分の身体を認識して成長していきます。つまり、幼児期から運動に親しませることは、脳の発達から考えてもとても重要なことなのです。

集中力を高めるための運動「背筋のばし」。身体に「1本の線を通す」イメージでのばすのがポイント
画像=『5歳からの最新!キッズ・トレーニング』
集中力を高めるための運動「背筋のばし」。身体に「1本の線を通す」イメージでのばすのがポイント

脳を正しく「興奮」させることが、「抑制機能」を育てる

キレる若者が多いと言われる昨今、幼少期の運動経験に原因があるとする説もあります。現在、日本の3〜6歳の子どもの約半数は、スマートフォンやタブレット、あるいは携帯ゲーム機などのデジタル機器を日常的に利用していると言います。前述したように、脳は幼少期に「運動野」から発達する大事な時期。動かなければいけない時期に、スマホやタブレット、ゲーム機だけで遊んでいたらどうなるでしょうか? 人間にとって必要なことをしなければ当然マイナス影響はあります。身体的な発達はもちろん、脳の発達にも影響を及ぼすのです。

子どもがキャーキャー言いながら追いかけっこをしたり、サッカーやドッジボールで夢中になって遊んだりして、楽しく、気持ちよく身体を動かすことは、脳全体のネットワークが高い次元でつながることを促し、それは複雑なことを考える力へとつながっていきます。夢中で遊んでいる時には、脳ではシナプス同士がパチパチと光を放ちながら、興奮状態に入っているのです。

そんなに興奮させてばかりいると、コントロールの効かない、落ち着きのない子になるのでは? と心配する方もいるかもしれません。これはまったくの逆で、正当な興奮を味わった脳のほうが、むしろコントロールが効くようになります。なぜなら「興奮」を経験することは、同時に「興奮を抑える」という経験を増やすことにもなるからです。