トレーニングの目標設定とは人生設計である

長期的スパンで見ることも必要でしょう。今の年齢から将来を見据えたとき、どんな暮らしをしていたいのか、夢や理想はありますか? それを叶えるには、どんな身体であることが望ましいでしょうか。

吉田輝幸『6つの力を養い、理想の働き方を叶えるトレーニング』(幻冬舎)

将来の夢の実現には、経済や環境、周囲の理解とともに、自分の「身体」も欠かせない重要な要素です。ビジネス・アスリートとして今向き合っている仕事や、この先の長い将来など、トレーニングの目標やビジョンを掲げるには、短期・長期と視点を変えながら、人生全体を俯瞰して考える必要があるのです。

このことは、私自身が仕事を通じて、さまざまな分野や立場で働く方々と接していて感じることでもあります。たとえばアスリートの場合なら、「あるべき姿」として、

「メジャーリーグで3割打ちたい、シーズン中フル出場したい」

といったことが挙げられたりします。それに対して必要な身体的要素は何か、現状はどうなのかといった指標が見えてきます。ビジネスの世界で戦う経営者たちも、自分の思う「あるべき姿」をそれぞれ明確に描いています。アスリート並みの身体を目指す人もいますし、仕事のパフォーマンスが発揮できれば、あとは健康維持のためという人もいます。

ビジネスの手法は自身の現状把握にも役立つ

ビジネスにおいて、現状把握や目標達成のためにはさまざまな考え方や手法が用いられます。「MECE(ミーシー)」もその一つで、簡単にいえば「漏れなく、ダブりなく」という意味です(Mutually Exclusiveand Collectively Exhaustiveの略語で、「個々の事柄が重複することなく、しかも全体として漏れがない」ということです)。

複雑なビジネスの現場では、ものごとの全体を把握しながら、個別の事柄にも対応して効率的に進めていくことが求められます。正解のない世界で最善策を最善のタイミングで打っていくには、漏れやダブりがあっては効率が下がってしまいます。こうした事態を防ぐためにあらかじめ考える手法の一つが、MECEです。

もう一つ手法の例を挙げると、MECEを具体的に使うためのものとして「フレームワーク」があります。

今、「あなたの身体の現状は?」と聞かれたとしたら、「何をどう答えればいいのかわからない」となる人は多いのではないでしょうか。ここで、もし目安とすべき切り口が示されれば、グンと考えやすくなるはずです。「そうだな、体重や体脂肪は許容範囲のはずだけれど、見た目にはもっと太って(やせて)見える気がする。体力的には、疲れやすくてスタミナ不足かもしれない。十分食べているつもりだが、会食が多くて、飲みすぎだろうか……」と。

このように、ものごとは複数の切り口があると明確に把握できます。切り口が漏れなく網羅されているかどうか、同じ内容の切り口がダブっていないかを考えれば、MECEもクリアできます。