ツイッター社がトランプを「裏切った」
発端は、2020年5月26日にトランプ米大統領が投稿したツイートからだった。
There is NO WAY (ZERO!) that Mail-In Ballots will be anything less than substantially fraudulent. Mail boxes will be robbed, ballots will be forged & even illegally printed out & fraudulently signed. The Governor of California is sending Ballots to millions of people, anyone.....
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) May 26, 2020
Get the facts about mail-in ballots
(翻訳)「郵送投票で現実として不正が起こらないとは言えない(絶対に!)。郵便受けからは投票用紙が盗まれる、投票用紙が偽造される、違法に印刷までされて、不正に署名される。カリフォルニア州知事は何百万の人々、そう誰かれかまわず投票用紙を送りつけている」
※郵便投票について正しい知識を。
11月の米大統領選を控え、郵便投票が不正を招くことを懸念したトランプ大統領のツイートだったが、ツイッター社がこれに郵便投票を擁護するマークを入れたのである。トランプ大統領は「言論の自由への侵害である」と抗議のツイートを投稿するのだが、ツイッター社はさらに警告を付け続けた。
ツイッター社の措置に、トランプ大統領が憤慨し反撃するのは当然だろう。ツイッターはトランプ大統領の政策をことごとく邪魔する既存メディアに対抗するための唯一最大の武器である。そのツイッターが、今度は自分の敵になろうとしていた——。
2016年の米大統領選が「SNS選挙元年」
「フェイスブックが産み、ツイッターが育てた大統領」——トランプ大統領について、これまでの米国大統領との違いを端的に表すとしたら、そんな表現がふさわしいかもしれない。
前回2016年の大統領選挙では、マスコミでは数々の悪評が渦巻いていた一方で、フェイスブック内では「ドナルド・トランプは米国の救世主になる」というコメントにあふれていた。ビル・クリントン大統領、バラク・オバマ大統領と民主党政権が続き、米国がグローバル化の波にのまれていくと、大都市部以外の地域で、民主党に対する不信感や怨嗟の声が広がっていた。「ビルのあの高慢ちきな妻が民主党から次の大統領になるのは嫌だ」と思っていた米国民はかなりいたのである。
2008年のオバマ大統領が誕生した選挙から選挙運動の中心は既存マスコミからSNSにシフトしつつあったが、2016年はSNSが主戦場となるまさに「SNS選挙元年」となった。とくに、トランプ陣営のブレーンとなったカリスマIT投資家のピーター・ティールと、戦略家で保守系ネットメディアのトップだったスティーブ・バノンの存在は大きかった。
その中でも顕著に効果があったのが、バノン氏が仕掛けたフェイスブックの「ターゲット広告」だった。バノン氏は選挙対策のコンサルティング会社で、2016年のイギリスのEU離脱を問う国民投票でもブレグジット派勝利に大きな影響を与えたといわれる「ケンブリッジ・アナリティカ」の役員でもあった。同社がフェイスブックから不正に入手したといわれるデータをフル活用して、ヒラリー・クリントンに対してあからさまなネガティブ広告を大量に打ち、「ヒラリー嫌い」を劇的に増やし、同時に「トランプ救世主論」が密かに広まっていった。