不在者投票とは違う「郵便投票」は不正の温床か
冒頭の「トランプ対ツイッター」の戦いが、郵便投票を争点としていることは言うまでもない。米国の郵便投票について、日本では「不在者投票に近いもの」という誤解があるようだ。不在者投票は離れたところにいて現地で投票できない人たちが、自分から投票用紙を請求して近くの関係機関などで投票するというもの。それに対して、郵便投票は州政府が有権者に投票用紙を送って、それを郵便で返送してもらうというしくみになっている。
郵便投票は以前から不正投票の温床になっていると指摘されていたのだが、今回の選挙では、とくに民主党側が新型コロナウイルスを口実に郵便投票を大々的に広げようとした。
郵便投票が不正を生みやすいのは、投票用紙が送られるのが有権者であるとは限らない点にある。州政府がすべての住人について有権者に投票の資格があるかどうかを把握するのは、とくに大きな州では不可能であり、他州に移動したり亡くなっている人たちに送られたことも確認されている。
すると、送り返された投票が本当に本人のものかどうかわからない。さらには、認知症の年配者が多い養護施設などに送られている場合に、その施設が一括して送り返してきた投票用紙が、本当に本人の意思なのか確かめようがない。
さらに、郵便投票で集計不正が起こると、確かめようがないという不安もある。そのために、たとえば、民主党が行政を握る州では共和党党員が監視員をするといった措置がとられたのだが、監視がある時間帯に拒否された事例も少なからず報告された。
ただし、郵便投票不正については「ほとんど不可能」から「不正し放題」までその評価にはかなりの隔たりがある。「本当のところはよくわからない」としておくしかないだろう。
いずれにしても、民主党側が郵便投票で自分たちが有利になるということはわかっており、郵便投票を広めることがトランプ大統領の再選阻止の切り札になると考えていたことは間違いない。
だから、トランプ大統領としては郵便投票をできるだけ抑えて、投票所での投票を基本にすることで民主党側が不正できないようにしようとしていたわけである。ところが、そのための武器であるはずのツイッターで、肝心のツイッター社が「郵便投票賛成」に回ったために、今度はツイッターによってトランプ大統領が追い込まれることになってしまった。
バイデン息子のスキャンダル報道にリンクできない
ツイッター社が民主党の手に落ちる一方で、もう一つの巨大SNSフェイスブックも同様に民主党に狙われていた。フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグは、フェイスブックがトランプ大統領誕生の原動力になっていたことが発覚したことから、民主党やリベラル勢力からあたかも集団リンチのように激しく攻め立てられていた。
簡単に民主党に落ちたツイッター社と違い、民主党側が要求する「ファクトチェックをしろ」(これは「トランプの投稿に制限をかけろ」ということとほぼ同意)という圧力に屈せずにいた。そのため、民主党候補のひとりだった左派のエリザベス・ウォーレンは、「フェイスブック解体」を重要な公約に掲げたほどだ。
ところが、そのザッカーバーグ氏も執拗な攻撃に、投票直前に“ファクトチェック”をすることを認めた。それは、リベラル派の牙城シリコンバレーの企業であるフェイスブックの社員の多くが民主党支持であり、ザッカーバーグ氏が内外から突き上げられたからである。
そして、トランプ陣営の勝利の切り札となるはずだった、民主党候補ジョー・バイデンの息子ハンター・バイデンの大スキャンダルの報道が、ツイッターとフェイスブックでリンクできない状態に陥った(「バイデンのスキャンダル拡散を、SNS・リベラルメディアが阻止している」)。これに怒った共和党は、ツイッター社のジャック・ドーシーとザッカーバーグを公聴会に召喚して締め上げた。特に共和党の重鎮テッド・クルーズ上院議員の怒りは尋常ではなく、「選挙で選ばれてもいないおまえに、なぜ言論をゆがめる権利があるんだ!」と本気の怒りをぶつけて、ドーシー氏を震え上がらせている。ツイッターでハンター・バイデンの記事がリンクできるようになったのは、その直後のことだ。