「濃厚接触者追跡」の意味は失われつつある

保健所の方から10月にうかがったお話です。

「陽性が分かった人がいました。元気だったので日本中を移動していました。会議を行った東北や近畿地方の各県の多数の保健所に連絡して濃厚接触者をあぶり出し全員のPCRを依頼しなくてはいけなりました。彼一人のために1日仕事だった」とのことでした。「やっても検査陰性の関係者数が多数にのぼるだけでしょう。その人の調査だけで数十万円以上はかかっています。」とのことでした。

さらに、あまねくウイルスが拡散しているときには複数経路からの感染も混在してきます。例えばコロナ陽性Aさんの隣にいたBさんを調べたら陽性だった。でも、BさんはAさんからではなく、たまたま遊びにきていたお孫さんからもらったのかもしれません。

「幼児は新型コロナウイルスの最強の運び屋だった?」と、子供がウイルスを広めている可能性が指摘されています(注27)。また、子供のコロナも家族内感染と報告されています(注28)

AさんとBさんはお互い濃厚接触者ではありますが、実際は社内感染によるクラスターではなく見分けがつきません。陽性の人がポツポツ存在している時には、そういうことが起きがちです。人々がウイルスに免疫を獲得していく過程を「可視化している」にすぎないのかもしれません。信頼度も低下しているPCR検査で、市中感染の全例を追跡調査する意味は失われつつあります。

「陽性者が減ればいい」という医療者の硬直化したロジック

コロナ対策の簡素化は、経済的な影響も大きいことが指摘されています。いち早く経済の専門家は、指定感染症レベルを下げるように提言していました(注29)。「コロナ対策で1.6兆円 医療支援や検査態勢強化 政府予備費」(注30)と医療機関への多額の補助金が続いています。指定感染症レベルを下げて対応を簡素化すれば、補助金のための国民の税金の節約にもなります。

簡易キット

陽性者(発症者、重症者ではなく)が減れば良いというパラメータが一つしかない医療者の硬直化したロジックよりも、シンクタンクによるグローバルで多数の視点から繰り出されるシステム思考(注31)の方が優れています。日本の各界の人々のインテリジェンスの高さは素晴らしく心強いものです。

新型コロナウイルスは、文化放送でもお伝えしたように野球選手のように発熱もなく無症状の方がとても多いので見分けがつきません(注32)。彼も追試験で陰性の偽陽性でした。

簡易キットが国内外複数の会社から登場してきています(注33)。写真は、医療用品メーカーさんからクリニックにご厚意で届けていただいたものです(注34)