PCR検査で検出できない恐れがある「変異体」可能性
10月下旬に新型コロナウイルスSARS-COV2の変異体が欧州で流行していることが報告されました(注1)。遺伝子の変異が大きいと、従来の試薬ではPCR検査では検出できない可能性があることが世界的科学誌『Lancet』でも指摘されています(注2)。
このウイルスは20A.EU1と呼ばれるもので、蔓延しているコロナウイルスの特徴的な部分で複数箇所にわたり大きく変異しています。重症化しやすいかどうかなど、臨床像の調査が大急ぎで進められています(注3)。
「新型コロナウイルス」より「新型」が登場し、もともとのウイルスは季節性の仲間入りを始めています。新型インフルエンザと呼ばれていたものがA(H1N1)2009pdmと、「新型」が外れ季節性(旧型)になったものと同じ経緯です。
PCRは、新型に特有の遺伝子を鋳型にしています。鋳型にしている遺伝子が変異してしまうと、PCRにかからなくなり感染していたとしても陰性になるかもしれません。遺伝子に合わせた鋳型試薬の変更が必要になります。大幅な変異体・バリアントが流行すると現在のPCR検査自体が無効になるかもしれません。変異と試薬作成の終わり無きいたちごっこになります。
新規患者数が増加しても、重症者が増えていない
われわれが「新型コロナウイルス」と呼ぼうとも、ウイルスの素早い変異の中ではすぐに昔のものになります。現在の姿は、コロナウイルスにとっては変異の長い歴史の中のひとつにすぎません。
急速に変化を続けるコロナウイルスの遺伝子変化は大きな樹形図になっています(注4)。新規患者数が増加しても、重症者が増えていない(注5)スウェーデンのテグネル博士は、夏のバカンス旅行の影響はなかったと分析しています(注6)。
幸いなことに、アジア・オセアニアではコロナウイルスは重症化しにくいようです。変異体が持ち込まれても、私たちにとっては通年の変化のひとつにすぎないからかもしれません。
長い時間軸と地域性の平面の考察の両方のパラメータが必要です。けれども、なかなかこういった全体を俯瞰する情報は伝えられません。