ワンクリックで離婚が成立するなど、デンマークの電子政府が注目を集めている。北欧の政策に詳しい明治大学教授の鈴木賢志さんは、「電子政府を加速させるポイントは高い技術力とは限らない」と指摘する。デンマークにあって日本に欠けているとても重大なこととは――。
素朴で田舎っぽいイメージの国がなぜ
「ブルートゥース(Bluetooth)」をご存じですか? スマホにコードレスのイヤホンをつないだり、コンピュータにコードレスのマウスをつないだりする時にお世話になっている、あれです。それでは、なぜ「ブルートゥース」と言うのかご存じですか? 実はこの言葉は、1000年以上前のデンマークの王、ハーラル1世に由来しています。彼には神経が死んで青くなった歯があったようで、そのことから「ブルートゥース=青歯王」と呼ばれていました。彼は分裂状態にあったスカンジナビア半島を平和のうちに統合したことで知られており、アメリカのインテルとスウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアでバラバラだった無線規格を統一するプロジェクトを彼の偉業になぞらえたというわけです。
そんな偉大な王の子孫である現代のデンマーク人たちは、今やそのIT分野で世界に名をはせています。国際連合が2年に1度実施している「電子政府調査(e-Government survey)」において2018年、2020年と連続で、世界で最も電子政府が発達している国に選ばれました(図表1)。
けれども、正直なところデンマークに対して「高度なIT技術」のイメージを持っている日本人は、それほど多くはないでしょう。実際、デンマークから日本への主な輸入品は、豚肉、乳製品、医薬品であり、電化製品などはむしろ日本からデンマークに輸出しています。私が持っているデンマークの印象も、機械的というよりは、自然・農村といった、素朴で田舎っぽい感じです。