共和党は月、民主党は火星を掲げてきた

ここのところ、米国は政権が変わるたびに、次の目標が月か火星かで変化してきた。ざっくり言えば民主党は火星、共和党は月だ。

1989年にブッシュ(父)大統領は、月面着陸20周年の記念式典で、月や火星への有人探査構想を打ち出した。しかし巨額の費用などの問題から、米国内での反対が強く立ち消えになった。

2004年にブッシュ(息子)政権は再び同様の計画を打ち出したが、この時も国民の不評を招き、NASAは「おじいさんの時代の月着陸とは異なる」と違いを強調するのに躍起となった。

民主党のオバマ大統領は月探査を取りやめ、2030年代中頃に火星への有人探査を目指すと目標を変えた。トランプ大統領はそれを再び月へ戻した。11月の大統領選挙でトランプが勝利すれば「再び月へ」という流れは一層加速されるだろう。

2009年1月20日、バラク・オバマ大統領就任式
写真=iStock.com/carterdayne
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バイデン氏が勝ったら計画はどうなる?

ではバイデン前副大統領が勝利したらどうなるか。火星は月よりはるかに遠い。地球から直行するのは技術的に難しく、巨額な費用がかかる。月を中継地点にしようと考える可能性は高い。NASAなどの専門家の間には、小惑星への有人探査を唱える人もいるが、よほど魅力を打ち出さない限り、目標に据えるのは難しい。

これまでに人類が蓄積してきた技術や知見からすると、どちらを強く打ち出すかの違いはあっても、「月」と「火星」は目標として生き続けるだろう。初の有人宇宙飛行から約60年になるが、選択肢はそう多くはないのだ。そして、全米に広がる大中小企業の産業振興を考えると、月や火星への歩みを簡単にやめるわけにはいかない現実もある。トランプ、バイデンどちらが大統領に選ばれても、月火星の探査はこれからもさまざまな形で残っていくだろう。

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