「すぐに選挙遊説に戻る」と感染を選挙運動に利用

新型コロナウイルスに感染したアメリカのトランプ大統領が5日夕(日本時間6日朝)、ワシントン郊外にあるウォルター・リード軍医療センターから退院し、ホワイトハウスに戻った。入院から3日後の早期退院だった。ウイルスと戦う姿勢を支持者に示したいのだろうが、ウイルスを馬鹿にするとひどい目に遭う。

退院しホワイトハウスに戻ってきたトランプ大統領=2020年10月5日
写真=Sipa USA/時事通信フォト
退院しホワイトハウスに戻ってきたトランプ大統領=2020年10月5日

退院直前には、ツイッターで「すぐに選挙遊説に戻る」と11月の大統領選に向けて自らの健在さを強くアピールし、感染を選挙運動に利用していた。

トランプ氏は2日未明に感染を公表した後、2日夕に入院。入院前には高熱を出して血中の酸素濃度が低下し、酸素吸入を受けた。酸素濃度が下がったのは、肺の機能が落ちたからだろう。いわゆる新型コロナ特有のサイレント肺炎(沈黙の肺炎)を起こしつつあったのかもしれない。

世界最高の治療が受けられるのは「地位と富」があるからだ

トランプ氏は74歳。感染で高齢者は病状を悪化させて命を落とす危険性がある。

現役の大統領を新型コロナの感染で死なせては、アメリカという国の威信にもかかわるから担当の医師団や側近たちは真剣だ。

これまでに重症患者に使用される抗炎症薬「デキサメタゾン」や抗ウイルス薬「レムデシビル」が投与されたほか、未承認の抗体薬も使われた。現在も専門医による治療が続けられている。公的医療保険のないアメリカでは個人が支払う医療費は高い。最高の地位と巨額な富のあるトランプ氏だからこそ、庶民には受けられない高額な治療が受診できるのである。トランプ氏自身が不死身なのではない。